リーンとは? ビジネス上の意味やアジャイルとの違いなどを解説

 2022.07.21  2022.08.24

「リーン」はビジネスの変革に重要な意味を持っています。この記事ではリーンの概要から目的、考え方、アジャイル開発との違いについて解説します。また、「リーンマネジメント」の意義や種類、目的、具体的なプロセスから、「リーンキャンバス」を使ってビジネスを可視化する方法もご紹介します。

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リーンとは「無駄をなくすこと」

英語でリーン(lean)とは、そもそも「脂肪やぜい肉がない」「均整のとれた」といった意味があります。日常生活で「リーン」が使われるのは限定的ですが、ビジネスシーンでは、「無駄がない」「無駄をなくす」という意味で比較的よく使われています。

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リーンのビジネスでの意味

ビジネスにおけるリーンは、生産現場などで「リーン生産方式」などの言葉がよく使われています。「リーン生産方式」は元々、トヨタ自動車が採用していた、徹底的に無駄を省く「トヨタ生産方式」(Toyota Production System ※以下「TPS」という)の基本理念から生まれました。そこから、1980年代にアメリカのマサチューセッツ工科大学で研究された「Lean Production System」(リーン生産方式)が世界で認知されるようになったのです。

このような背景から、ビジネス上でのリーンとは、生産工程を見直し、不要な工程や要素を徹底的に排除したビジネス方式と捉えられています。「無駄なぜい肉がない」といった本来の英語のニュアンスが残っていることがわかるでしょう。

リーンの目的

では、企業がリーンを行う目的とは何でしょうか。
企業は、「ヒト(人的資源)」「モノ(物的資源)」、「カネ(資金)」といった様々な経営資源を適切に分配し、事業活動を行っています。そこにリーンの方法論を取り入れていくと、どのリソースに重点を置けばよいかがわかり、メリハリをつけた経営が可能になるのです。

ここで、大事なポイントが2つあります。
まず、市場や顧客の視点に立つことです。必要なリソースをできるだけそぎ落としつつ、顧客価値を最大限高める事業活動を行っていくことが求められます。
また、リーンは継続的に見直していく必要があります。市場や顧客ニーズの変化をキャッチし、ときには思い切った方針の転換も必要かもしれません。均整のとれたプロポーションを維持するために日頃から運動するのと同様に、よりよい事業経営に向けて改善を繰り返していくことが大切なのです。

リーンとアジャイルの違い

リーンと似たような言葉で「アジャイル」がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。

最初に、リーンが掲げるコンセプトは「顧客開発」です。市場や顧客からフィードバックを得ることで改善をし続け、最終的には「どれだけ収益を上げられたか」に注目しています。

一方、アジャイルのテーマは「製品開発」です。開発から設計、要求といった一連のプロセスを、トライアンドエラーで繰り返し、最終的には製品の「進化」を重視します。

また、それぞれの生まれた背景を見ると、その違いがさらによくわかります。
リーンはスタートアップ起業家を中心に、ビジネスにおける課題や消費者ニーズを図るプロセスとして生み出されました。しかし、アジャイルは ソフトウェアを操るエンジニアを中心に、エンジニアリングに関する課題を解決するプロセスとして生み出されました。

リーンマネジメントとは

リーンは製造業のみならず、様々な業界でも役立つ「リーンマネジメント」という手法が誕生し、広まりました。リーンマネジメントでは市場や顧客からのフィードバックを基に改善を重ね、スクラップ&ビルドをしていきます。ただ、それぞれの業務プロセスは全てつながっていることから、高い品質を保持するためには全体を俯瞰して見る必要があります。そこで、プロセスの全体像を眺め、改善を積み重ね、最高の品質を目指す活動が、「リーンマネジメント」なのです。

リーンマネジメントには、以下のように、3つの本質があります。

  • 顧客の視点に立った価値を提供する
  • 最終ゴールに価値をもたらさない無駄を省く
  • 継続的に改善する

つまり、リーンマネジメントにはリソースを適切に配分することで、顧客に価値を感じてもらえるようにする目的があります。リーンマネジメントの種類には、「リーン生産方式」や「リーンスタートアップ」があります。いずれも、のちほどご紹介します。

リーンマネジメントを行うメリット

リーンマネジメントには多くのメリットがあります。1つには顧客へ提供するまでに適正なプロセスを踏むことによって、製品やサービスの価値を高められることが挙げられます。

次に、物理的な無駄や、待機時間といった本来不要な時間を減らすことで工程を最適化できます。それにより、製造業の生産工場では、生産過多を防げるでしょう。さらにリーンは、改善を繰り返しながら最高のゴールを目指す手法のため、業務やプロジェクトを改善するのに必要な創造性を身に付けられるようにもなります。

顧客の視点で価値を提供するため、顧客が今何を必要としているのかをタイムリーかつ的確に掴んだ上で製品やサービスを提供できるのもメリットです。また、迅速なレスポンスが可能になり、発注(着手)から納品までのリードタイムも短縮化できるでしょう。

顧客との信頼関係を構築しリピーターを増やすためには、質の高い製品の安定供給が不可欠です。そこで品質チェックのプロセスを追加すれば不良品率を下げられるようになり、在庫をモニタリングすることで無駄を防げ、適正な在庫管理が実現します。

リーンマネジメントで重要な5つのプロセス

リーンマネジメントを行っていくには、5つの重要なステップが必要です。これらのステップを適切に踏んでいくことで、顧客満足度を向上させられるようになります。

  • 顧客価値を特定する
    まず、製品やサービスを届ける相手が誰なのかを考えます。このとき、相手は社内の関係者なのか、社外の顧客なのかに分けて検討すると、どうすれば価値を生み出せるのかがおのずと特定できるでしょう。

  • 無駄を削除する
    「無駄の削除」は、リーンマネジメントにおいて最も重要なプロセスです。そのためには、何が無駄なのかをまず突き止める必要があります。そこで、プロジェクトの開始から完了まで、理想のワークフローと実際のワークフローの2パターンを作成します。これは「バリューストリームマップ (VSM)」と呼ばれ、モノと情報を整理できるツールとして多くの企業で使われています。VSMを活用し比較することで、分散して見えにくくなっている無駄を発見したり、課題を見出せたりするのがポイントです。

  • 理想のワークフローを作る
    無駄を発見できれば、次はその無駄を取り除いた上で、理想のワークフローへ改善していきます。改善のプロセスにおいて、新たな無駄が発生しないように注意しましょう。チームのメンバーとコミュニケーションを取りながら、どうすれば問題点を解決してプロジェクトを成功させられるか、改善方法を検討します。

  • ワークフローを効率よく動かす
    製造業では、後工程で部品を使用した際に、減った部品在庫の表を前行程へ送り、前行程はそれを生産指示として受け取り生産するという「カンバン方式」がとられています。これは、あらかじめ決められた生産計画に基づいて生産するのではなく、後行程から前行程への生産指示という意味で、「プルシステム」とも呼ばれています。
    このプルシステムを活用すると、前段階で作成した理想のワークフローを効率よく動かせるようになるでしょう。具体的には、プルの合図を逆に追っていくことで、顧客が必要な分だけを生産することも可能です。

  • 改善を続ける
    市場の動向や成果物を受け取る社内の関係者や顧客のニーズは常に変化しているため、それに合わせて製品をチェックし、より良いワークフローにできないか検討します。このように、継続して改善を施していくことで、新たな無駄を発生させず、最高の顧客価値を提供できるのです。

リーン生産方式

ここで、リーンマネジメントのひとつである「リーン生産方式」について解説します。リーン生産方式の考え方は、そもそもトヨタ自動車の生産現場で採用されていた生産方式「TPS」が基になっています。これをアメリカのマサチューセッツ工科大学が研究し、体系化したものが、「リーン生産方式」として広まりました。

リーン生産方式には、4つの代表的な取り組みがあります。

  • 無駄を省く
    作業には「真に重要なもの」と「本来は無駄でもしなければならないもの」と「無駄」の3種類があります。その中で無駄を除き改善することで、真に重要な作業の比率を上げていくことが大事です。

  • 改善
    改善の方法も、コストを下げるだけではなく、より高品質なものをより早く提供するように行います。

  • 問題点の可視化
    何か問題が起きたとき、問題が起きたこと自体を周囲の関係者に知らせることで、スムーズに解決策を検討できるようになります。

  • 原因の究明
    問題が起きたときに「なぜ?」を繰り返して、表面には見えない根本的な原因を探っていきます。これにより、次は同じ問題が起きないように改善できます。

リーンスタートアップ

リーンスタートアップとは、起業や新しいビジネスを創出する際に便利なマネジメント手法です。アメリカの起業家であるエリック・リース氏が2011年に著書の中で提唱し、広く知られるようになりました。具体的にはまず、最低限のコストで必要最小限の試作品を短期間で作ります。そして顧客の反応を的確に取得することで、顧客がより満足する製品やサービスを開発していくのです。

リーンスタートアップを実践するには、4つのプロセスが必要です。

  • 構築
    顧客のニーズを基に、どのような製品やサービスが適しているのか、アイデア(仮説)を立てます。そしてそのアイデアを活かして新製品やサービスを企画し、最小限のコストと最短期間で試作品を作ります。
  • 計測
    いきなり開発するのではなく、前段でつくった試作品において顧客がどのように受け取るのか市場の反応を観察します。実際に使ってもらい、アンケートやインタビューなどを通して顧客の反応を収集し、計測します。
  • 学習
    計測した結果を踏まえて、どのように試作品を改善していくべきかを検討しましょう。最初の仮説が誤りであればそこから見直したり、万が一、これ以上検討すること自体が無駄だと判断すれば、白紙に戻したりできるのも、リーンスタートアップのメリットです。
  • 再構築
    微調整で改善できない場合は、方向転換(ピボット)し、仮説から構築し直します。構築から学習までをトライアンドエラーで繰り返すことで、より顧客価値の高い製品やサービスを提供できるでしょう。

リーンスタートアップを行うメリット

では、リーンスタートアップを行うと、どのようなメリットがあるのでしょうか。
まず、コストや時間などの負荷を抑えられる点が挙げられます。「顧客の反応から改善する」ことがベースになっているため、見当違いが減るためです。また、アイデアが出ればすぐに試作品を作り改善できるため、早いサイクルでリリース期間を短縮化できるメリットもあるでしょう。

さらに、製品やサービスについて反響に敏感になり、顧客からの反応やフィードバックの見逃しが減ることも期待できます。

起業やビジネスモデルの見直しに使えるリーンキャンバス

最後に、起業や既存のビジネスモデルを見直す時に便利な「リーンキャンバス」についてご紹介しましょう。

リーンキャンバスとは

リーンキャンバスとは、事業のビジネスモデルや事業計画を1枚のシートにまとめたフレームワークを指します。収益構造(ビジネスモデル)や経営戦略を検討する際には非常に有効です。リーンキャンバスでは、「顧客の課題」「顧客セグメント」「独自の価値提案」「ソリューション」「チャネル」「収益の流れ」「コスト構造」「主要指標」「圧倒的な優位性」といった9つの切り口に分け、それぞれについて考えていきます。例えば、「圧倒的な優位性」であれば市場における自社の強みとは何かを想像するとよいでしょう。

リーンキャンバスのメリット

リーンキャンバスを用いて、新規で構想しているビジネスや既存のビジネスを可視化すると、どのような収益構造になっているのかが紙一枚でわかるようになります。また、項目が用意されているため、早ければ半日以内に作成でき、スピーディーに次のアクションへ移れるのも魅力です。さらに、時間や場所にとらわれずに関係者と共有できるため、その分、改善もしやすくなります。

このように、リーンキャンバスには従来にはない多くのメリットを享受できるため、とくにビジネスモデルの見直し時には積極的に活用するとよいでしょう。

まとめ

無駄のない経営や効果的な経費削減に向けてビジネス変革に取り組む場合、リーンキャンバスなどを活用して既存のビジネスモデルを見直してみることが大事です。リーンは元々製造業から生まれた用語ですが、今や様々な業種で使われている「無駄を省く」経営手法です。「リーン生産方式」や「リーンスタートアップ」といったリーンマネジメントのなかで、プロセス全体を俯瞰し改善を積み重ねていくことで、ビジネスの最適化や顧客価値を高められるようになるでしょう。

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