DX推進において企業が取り組むべきアクションとは?

 2022.05.26  2022.07.28

DXの実現は経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」への対応として推進すべき重要課題です。
DX推進において、企業はIT人材の確保やオープンイノベーションの活用が求められます。本記事は、DXの定義や重要視される理由、今後の課題、導入によるメリット・デメリット、企業が取り組むべき課題を解説しています。

DXとは?定義をおさらい

DXとは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略語です。なぜ「DT」ではなく「DX」なのかというと、DTはプログラミング用語として、すでに浸透しているため、「Transformation」のTransをXと略し、「DX」と呼ばれます。

DXの直訳は「デジタル変換」ですが、定義としては「デジタルの浸透によって人々の生活をより良い方向に変革させること」とされています。ビジネス用語としては様々な解釈があるものの、「最新のデジタル技術を駆使して企業活動をより良い方向に変革させること」という意味で用いられることが多いです。

DXとともに「Digitization(デジタイゼーション)」や「Digitalization(デジタライゼーション)」という用語も多く見られますが、それぞれ、DXとは意味合いが異なります。

まず、デジタイゼーションは、紙ベースを電子化したり、会議をWeb上でオンライン化したりするといった、個別のデジタル化のことです。デジタライゼーションは、IoTを活用し、業務全体をオンライン化するなど、フロー全体のデジタル化を言います。

DXはそのデジタル化をさらに進化させ、企業活動全体をデジタルで変革させることです。DXの実現手段として、デジタイゼーションやデジタライゼーションは不可欠と言えるでしょう。

DX推進が重要視されている理由

DX推進とは、企業がDXを推し進めていくことです。近年、このDX推進が重要視されており、主な理由として「2025年の崖」への対応、ビジネス環境の変化、働き方改革の推進などが挙げられます。それぞれの理由を以下で詳しく見ていきましょう。

・「2025年の崖」への対応

「2025年の崖」とは、経済産業省の「DXレポート」(2018年発表)に「今後、DXが日本で実現できない場合、企業の競争力は急激に低下し、大きな経済損失が起きる」という内容が記載されたものです。既存システムの利用から抜けられずに、IT技術の進化にも追いつけなくなることで、2025年以降、企業間の競争力が崖から落ちるように大きな経済損失が生まれてしまうと予想されます。

DX推進は、この「2025年の崖」を防ぐための対応として、もっとも重要視されているのです。
(参照:経済産業省「D X レポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」

・ビジネス環境の変化

ビジネス環境が変化したことも、DX推進が重要視される理由のひとつです。ビジネス環境の変化には、労働力不足やマーケットのグローバル化、消費行動の変化などが当てはまります。消費行動の変化としては、オンラインショップの利用数増加や、サブスクリプションサービスの浸透があります。
DX推進によって、インターネットを通したマーケティングを可能にし、ビジネスチャンスがさらに広がることが期待できます。

・働き方改革の推進

DX推進は、2019年に国が施行した「働き方改革」の施行にも深く関連しています。時間外労働の削減といった労働環境の改善が求められるなかで、その手段としてDXによるオフィス業務のデジタル化が注目されているためです。
例えば、Web会議システムを導入することで、出社せずにリモートワークが可能になるため、柔軟な働き方ができるようになります。また、RPAの導入により単純作業が自動化されれば、業務を効率化でき、長時間労働の是正にも繋がるのです。
働き方改革の実施には、DX化が重要な役割を果たすと言えるでしょう。

経済産業省もDXを推進

経済産業省は、2018年9月に公表した「DXレポート」において、国際社会と比較してDX化が遅れている日本は「既存のシステムでは生き残れない」と警鐘を鳴らしています。いわゆる「2025年の崖」と呼ばれるリスクです。
さらに、同年の12月にはDX推進を目指す企業に向けて、DXレポートを基にした「DX推進ガイドライン」を発表しました。

DX推進ガイドラインは「1.DX推進のための経営のあり方、仕組み」と「2.DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」の2つで構成されています。

流れとして、1つ目でDX推進における企業のあり方や仕組みを説明し、DX推進を理解してもらうことに重点を置き、2つ目で、DX実現に必要な体制や具体的な仕組みの構築など、実行プロセスの説明がなされます。DXにおいて、経営者が認識すべきことや失敗ケースも記載されており、読み進めるほど理解が深まるでしょう。

その後も、2020年に中間とりまとめとして「DXレポート2」、2021年には課題や方向性を整理したDXレポート2.1」を発表しています。新型コロナウイルスの流行で世界中が不安定になり、企業のあり方にも変化が訪れている昨今、本格的なDX推進が大きな課題と言えるでしょう。

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既存システムを利用し続けた場合のリスク

DX推進の理由には、「既存のシステムでは生き残れない」というものがあります。この既存システム(レガシーシステム)を利用し続けた場合には、どのようなリスクが生まれるのでしょうか。主なものとして、「コストの増大」や「システムのブラックボックス化」、「ビジネスの柔軟性の低下」が挙げられます。

・コストの増大

既存システムの維持には、多大なコストが必要です。最新テクノロジーから後れを取る既存システムは、公式サポートが切れている場合があり、セキュリティ上の問題からネット接続が困難で、別途、保守サービスを契約する必要性も出てきます。
また、故障などのトラブルは、金銭的にも時間的にもコストがかかり、ビジネスチャンスを逃してしまう可能性もあるでしょう。これは、DXが進まなかった場合の経済損失にも影響しています。

・システムのブラックボックス化

古い技術基盤において開発されたシステムは、現行の従業員が構造を理解していなかったり、保守技術者が退職してしまったりしていることで、システムに誰も手が出せない状態になることがあります。これをブラックボックス化と言い、既存システムがブラックボックス化すると、セキュリティが確保できず、データ消失などの重大なリスクを孕みます。

・ビジネスの柔軟性の低下

古いシステムのサポートやアップデートが終了したあとでも、マーケットは常に変化を続けています。既存システムではこの変化に対応できない可能性が高く、ビジネスの柔軟性を低下させます。
近年、システム開発技術は急速に進歩しており、様々なシチュエーションに合わせたサービスやシステムがあるため、刷新する際の負担は以前よりも抑えられるでしょう。システムのDX化は、ビジネスの幅を広げることにも繋がります。

日本におけるDX推進の課題

日本におけるDX推進の課題は、ビジネスにおけるITリテラシーの格差や深刻なIT人材不足、日本独自の習慣が挙げられます。以下で詳しく見ていきましょう。

・ITリテラシーの格差

日本では2020年から猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響により、テレワークをはじめとしたITインフラや就業規則を柔軟に変更して対応できた企業と、できなかった企業の差が拡大しています。これまで疑問を持たなかった企業文化や商習慣への変革へ踏み込めたか否かで、デジタル競争における明暗が分かれているのです。

・深刻なIT人材不足

日本は、IT需要の高まりに反し、深刻なIT人材不足に陥ることが予想されています。企業には、システムの運用・保守を外部の下請けに委託するという構造が少なからず存在します。そのことで社内のIT人材を育成できず、少子高齢化による労働者不足も相まって外部からIT人材を集めることが困難になるでしょう。さらにそれと並行して、個々人が変化に対して自ら学べるように社会全体として学び直しの仕組みを整えていく必要についても注目されています。個人が自発的に継続的かつ頻繁にスキルをアップデートしていける場をどう準備していくかも考えるべき課題です。

・日本独自の習慣

日本独自の習慣もDX推進の足かせになっています。具体的には、「ハンコ文化」や「回付が必要な稟議」などです。これはデジタル化に逆行する日本独自の習慣です。
また、勤勉で完璧主義な日本人の特性もDX化にそぐわないと言えるでしょう。なぜなら、デジタルの分野では最初から完璧を目指さず、最小限のものからアップデートを重ねていくというスタイルだからです。こうしたことも大きな課題になっています。

DXを推進するメリット・デメリット

DX推進は企業にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。また、デメリットはあるのでしょうか。ここでは、DX推進のメリットとデメリットを解説します。

DX推進のメリット

・生産性の向上

DX導入におけるメリットで大きな割合を占めるのが、生産性の向上です。最新テクノロジーの導入で、単純作業などのルーティン業務が自動化でき、業務効率化や人件費の削減、長時間労働の是正が期待できます。また、人為的ミスの防止にも繋がるでしょう。このように一定の業務をデジタル化することで、従業員がコア業務に集中できるようになり、生産性の向上に繋がります。

・新しいサービスやビジネスモデルの開発

最新テクノロジーを駆使した、新たなサービスやビジネスモデルを生み出すことも、DXの目的のひとつです。日々変化する消費者のニーズに沿ったサービスの開発は、企業にも消費者側にも大きなメリットをもたらします。また、新たなビジネスモデルを開発することで、市場競争力を強化し、他社が追随すれば経済の活発化に期待できるでしょう。

DX推進のデメリット

・初期費用、ランニングコストの発生

老朽化した既存システムから移行しDX化するには、初期費用として大きなコストがかかります。また、ITスキルの高い人材の確保や育成、運用・保守のベンダーの活用にもコストがかかることから、長期的な維持費用を要します。資金力のない企業でDXが進まない要因は、ここにあると言えます。

・結果が出るのに時間がかかる

DXは結果が出るまでに時間がかかります。「デジタルトランスフォーメーション レポート ~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~」でも、レガシーシステムを刷新する段階時点で3~5年費やした例が取り上げられています。DX化は試行錯誤しながら結果を出していくという必要があり、長期的な目線で、焦らず計画的に進めていくことが大切です。

参考:「デジタルトランスフォーメーション レポート ~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~(P16)

・組織全体の協力が必要

組織のなかには、ハンコ文化や回付など、慣れ親しんだ仕組みを急激に刷新しようとすると反発する従業員が出てくることがあります。
DXの定義にもある「変革」を行うためには、まず従業員にDXの必要性を理解してもらわなければなりません。企業がDXを進めるには、しっかり説明して組織全体へ協力を仰ぎましょう。

DXを実現するために取り組むべき課題

DXを実現するために取り組むべき課題は、主に「目的の策定」や「人材の育成・確保」、「外部の知見を取り入れる」の3つです。

目的の策定

DX実現のためには、経営陣による目的の策定が大きなポイントになります。単にデジタル化を進めていくのではなく、目的を明確にしておくことでDXの成功率は上がるのです。

例えば、CX(顧客体験)の向上という目的があれば、顧客情報の分析に特化したツールを導入するといった施策を無駄なく実行できます。
策定した目的を実現するには、どこを変革すればよいか、それにはどのようなデジタル技術が必要かをまとめておくことが重要です。

人材の育成・確保

DXの実現には、IT人材の育成・確保が必要不可欠です。たとえ適切なITツールを導入しても、専門知識やスキルがなければ使いこなすのは困難です。
一方で、専門知識の獲得はもちろん、それを自社のビジネスへ活用できるIT人材の育成には相応の教育コストと時間がかかります。外部からIT人材を確保しても、自社の従業員にノウハウが伝わらないという状況も起こりうるでしょう。時間はかかりますが、自社でIT人材を育成することは、長期的に見てメリットになります。
SIerなど専門家への委託も検討しつつ、柔軟な体制でIT人材の確保・育成に取り組みましょう。

外部の知見も取り入れる

DXの実現には、外部の知見を取り入れることも大切です。特に近年は、積極的に外部の新しい技術やアイデアを取り入れる「オープンイノベーション」の考え方が浸透しつつあります。
先述の通り、DX推進を阻害している要因として、日本企業の多様性のなさや流動性の低さが挙げられます。組織内だけでは克服が難しく、オープンイノベーションによって現況を打破することもひとつの手段です。DX推進には、オープンイノベーションが重要な特効薬になるかもしれません。

まとめ

ビジネスにおけるDXの定義は、最新のデジタル技術を駆使して企業活動をより良い方向に変革させることです。「2025年の崖」への対応において重要視されており、経済産業省は、企業のDXが進まなければ、2025年には大きな経済損失が生まれると予想しています。
一方、DX推進には課題も山積みで、日本におけるITリテラシー格差や日本独自の習慣、IT人材の不足などがDXを阻害しているとも言われています。

企業がDX推進することで、業務効率化による生産性の向上や新しいサービスの誕生、新たなビジネスモデルの開発などのメリットがあります。しかし、初期費用のコスト増大や結果が出るまで時間を要することも理解しておかなければいけません。

DX推進は、ただの理想では終わらせず、実現すべき重要課題と言えます。企業は、DXの明確な目的を策定し、IT人材の確保やオープンイノベーションの活用などに取り組み、DXの実現を目指しましょう。

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