3Dシミュレーションは、バーチャルな3次元空間内で対象のモデリングを行い、物体を再現して各種調査などを行うための技術です。本記事では、3Dシミュレーションの概要と活用した際に得られるメリットを説明しつつ、活用事例や3Dシミュレーションの課題なども解説します。
3Dシミュレーションとは?
3Dシミュレーションとは、仮想の3次元空間内に3Dデータから作成した物体を配置、動きなどを再現する技術です。商品を購入して実際に使用している状況をリアルにシミュレーションできるため、ECサイトとのコラボレーションにも使用されています。
3Dシミュレーションは、大型商品や組み合わせて購入する商品などのオンラインショッピングに最適です。部屋の中に家具を配置したイメージの再現、完成したコーディネート空間の提案などが可能です。オンラインショッピングだけでなく、ロボットの動作、製品の動作確認などにも活用されています。
3Dシミュレーションのメリット
3Dシミュレーションには、製品イメージが伝わりやすい、トラブルを想定しやすいなどのメリットがあります。様々なメリットから幅広いシーンで活用されています。
製品イメージが伝わりやすい
設計や生産の場合、2次元図面の情報だけでは、立体的な製品をイメージするのに限界があります。2次元図面で製品の情報を共有する場合、スタッフのイメージにズレが生じるリスクにも注意が必要です。立体の製品が3次元で再現されていると、そのままの形状を認識でき、スタッフ全員が適切に理解した上で設計作業を進められます。
顧客に製品を紹介するシーンでは、3Dシミュレーションを使用した場合に納入時の外観、サイズまでリアルに伝わるメリットがあります。平面的なカタログだけでは伝わらない全体像などを伝えられるため、製品納入時に見解の違いが生じるといったリスクの軽減が可能です。
トラブルを想定しやすい
製品の設計や製造上の問題から、製品トラブルが発生しないかどうかを3Dシミュレーションで予測可能です。3Dデータを用いて仮想空間上に製品を配置、動作させると、シミュレーションを活用して製品トラブルの検証を行えます。システムの実現精度や装置間で干渉が生じるリスク、サイクルタイムなどを確認できるため、不安があるトラブルを予測し回避できます。
設備設計に不備がないか、問題の発生を回避するにはどうすべきかなど、3Dシミュレーションで検討を重ねておくと、実際の製品にトラブルが生じるリスクを抑えられます。オンラインティーチングやロボットの動作検証などでも、3Dシミュレーションを使用したトラブルの把握が可能です。
完成品を使った検査と3Dデータを使った検査、両方の検査を活用する方法を用いると、検査精度の向上も期待できます。
試作品のコストがかからない
新しい製品の設計時には、すぐに壊れてしまう製品や動作に問題がある製品を作らないために、試作品を作成して動作などのテストを実施します。試作品に問題が見つかった場合には、問題点が解消されるまで試作品の改善とテストを繰り返さなければなりません。
3Dシミュレーションを活用すると、試作品を作る前に仮想空間でテストを行い、設計内容を改善可能です。シミュレーション上で行うため、製品の設計やテストのサイクルも短縮されます。これまでに作っていた試作品の製造数を減らし、試作品を使用して行っていた業務や費用も削減できることから、利益の最大化も期待できます。
3Dシミュレーションの活用事例
3Dシミュレーションは、バーチャルショールーム、ECサイトとの連携、商品の提案、デザイン&レイアウトのシミュレーションなど幅広い用途で活用されています。
バーチャルショールームの提案で顧客満足度・成約率向上
バーチャルショールームとは、スマホやPCなどからアクセスできる、アプリやブラウザ上のショールームのことです。顧客に直接本物の商品を見せることが難しい場合でも、バーチャルショールームを利用すると、様々な商品をリアルな映像と共に提案可能です。
家具・インテリア販売会社の事例では、ショールームに置けないバリエーション豊富な商品の提案に3Dシミュレーションを活用しています。シミュレーションでは、顧客の自宅の間取りに大型商品を配置することも可能です。VRを使用した映像で商品のセットをリアルに再現し、スマホなどで確認可能なプラットフォームの閲覧用URLをメールで送信できるため、顧客が家族間で情報を共有しやすいというメリットもあります。本物の商品が見られない場合や非対面でも伝わりやすい提案を行えます。
3Dシミュレーション×ECサイトの連携で売上アップ
3DシミュレーションとECサイトの連携では、ECサイトで販売している複数の商品を組み合わせて、コーディネートした仮想空間の作成が可能になります。顧客対応時には、自宅の部屋を再現した仮想空間に、顧客が気に入った商品を配置します。商品購入後に自宅で使用しているイメージを明確にできる3Dシミュレーションとの連携は、顧客の購入意欲の増進につながります。
購入したい商品が1つだけでない場合にも、室内に複数の商品を配置してコーディネートした様子をチェックできるため、色やサイズ、形など様々な組み合わせを試して検討できます。シミュレーションの活用から、商品をセットで気に入る顧客も増加し、まとめ買いする顧客が増えるなどのメリットも生じています。さらに、ECサイトの3Dシミュレーションで気に入った商品を見つけてから、実店舗に商品の購入に関して相談に行くケースも増加しています。
3D/VRのビジュアル提案で営業力向上
3Dシミュレーションで作成するVRは、実際に納入した際の製品の外観、サイズ感まで顧客にリアルに伝えられます。商品の購入を検討している場合、3Dカタログから商品を選択して、自宅に納入した際の外観やサイズ感を3Dのリアルなビジュアルで確認可能です。製品のサイズ感だけでなくレイアウトした際の室内空間も表現されるため、顧客は全体的に明確なイメージがつかめます。
3Dシミュレーションによって気に入った商品を選択、構成した場合には、作成したデータからリアルタイムで顧客に価格情報も提示されます。3Dのビジュアルデータは、顧客情報、価格、在庫情報と連携しているため、顧客への商品提案にもスムーズにつなげられ、サービスの質的向上が実現します。
商品デザイン&レイアウトシミュレーションの実現
ユーザーから評価の高い自社商品のデザイン、店舗内のレイアウト作成にも、3Dシミュレーションが役立ちます。バーチャルデザイン&レイアウトシミュレーションは、店舗図面、什器の3D情報、既存商品の3D情報、外部システムのAIサポートによる新商品のデザイン情報などのデータから仮想レイアウトを作るシステムです。
作成した仮想レイアウトは、複数の拠点に設置し顧客の視線情報などのデータを集めて評価します。広い地域にわたり、顧客が気にしている部分まで詳細にデータを収集できるため、顧客のし好調査をより正確に実施可能です。
3Dシミュレーションの課題
3Dシミュレーションの活用には様々なメリットがあります。ただし、対象物によっては限られたデータやある程度推測を交えたデータに基づいたシミュレーションを行わなければなりません。特に、新しい分野、基礎的なデータが不足している分野の開発などでは、シミュレーションを行った場合にその結果が充分信頼のおけるものにならないケースがあります。
まとめ
3Dシミュレーションとは、仮想の3次元空間内に3Dデータで作成した物体を配置してリアルなレイアウトや動作を再現する技術です。3Dシミュレーションの活用によって、製品イメージを伝えやすくなる、トラブルを想定しやすくなる、試作品のコストを抑えられるなどのメリットが得られます。
3Dシミュレーションの活用事例では、顧客の利便性を高め、イメージを明確に表現できるバーチャルショールームやECサイトとの連携、3D/VRのビジュアル提案などで売上向上が実現しています。ただし、3Dシミュレーションの活用は、データ不足などの問題からまだ難しい分野もあります。
- カテゴリ:
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