デジタルマーケティングを推進する際は、勘や経験などの曖昧な要素に依存しない、データを起点としたロジカルな戦略の立案・策定が求められます。そこで必要となる施策が、デジタルチャネルのアセスメントです。本記事ではアセスメントの概要と、デジタルマーケティングにおける重要性について解説します。
アセスメントとは?
アセスメント(Assessment)とは、客観的な視点に基づく調査や分析を意味します。アセスメントは、調査・分析の対象となる事象によって、用語の使い方や意味合いが異なります。デジタルマーケティングにおけるアセスメントは、Web広告のクリック率やランディングページのコンバージョン率、SNSのエンゲージメント率などを調査・分析し、改善策の立案や戦略の策定に役立てることが主な目的です。事業領域における代表的なアセスメントとしては、そのほかにも以下の5つが挙げられます。
- ITアセスメント
ITシステムの刷新や移行において、既存システムの運用環境を分析する。
- リスクアセスメント
事業や業務などに内在している不確実性や危険性を調査する。
- 人材アセスメント
従業員の能力や資質を評価して、人的資源管理に活用する。
- 環境アセスメント
開発事業や建築事業において、自然環境に与える影響を分析する。
- ヘルスアセスメント
個人や集団の身体的健康と精神的健康を社会的な側面から調査する。
アセスメントを実施するメリット
デジタルマーケティングの分野でアセスメントを実施する主なメリットは、以下の3点です。
企業ごとのデジタルマーケティングの課題を抽出できる
デジタルマーケティングでは、コーポレートサイトやオウンドメディア、ランディングページ、ECサイト、SNS、動画配信サービスなど、複数のデジタルチャネルを統合的に管理しながら、一貫性のある戦略を立案・策定しなくてはなりません。
そこで重要な役割を担うのが、各チャネルのユーザー動向を調査・分析するアセスメントです。PVやUU(ユニークユーザー)、流入キーワード、直帰率、コンバージョン率などを分析して現状の課題を抽出できれば、改善に必要な施策や導入すべきツールを明確化する一助となります。
効果のある具体策を実施できる
昨今はデジタル技術の進展に伴って市場動向の変化が加速しており、顧客ニーズやトレンドは常に移り変わっています。そのため、マーケティング戦略は一度の実施で終わりではなく、仮説と検証を繰り返しながらPDCAを回すプロセスが極めて重要です。そして、それには競合分析や顧客分析、アクセス解析などを実施し、施策の成果を定量的に評価しなくてはなりません。
アセスメントによって施策の成果や市場の立ち位置などを把握できれば、その知見に基づいて仮説と検証を繰り返しながら、マーケティング戦略の改善を実施できます。
セカンドオピニオンとして方針を客観視できる
デジタルマーケティングを推進する際は、客観的な視点に基づいて戦略の方針を定めなくてはなりません。例えば、オウンドメディアからランディングページへの送客が目標値に達していない場合、PVの増大やコンテンツの品質改善、メインキーワードの見直し、マイクロコピーのABテストといった施策が必要です。
限りある経営資源を有効活用するためには、本当に必要な施策を定めた上で、優先順位を明確化しなくてはなりません。アセスメントによって現状を正確に把握できれば、客観的視点に基づいて改善策の方針や施策の優先順位を策定できます。
デジタルマーケティングが抱える課題
デジタルマーケティングを推進するものの、目標とする成果を得られない企業も少なくありません。そのようなケースの課題として、以下の4つが挙げられます。
複数あるチャネルの連動ができていない
デジタルマーケティングにおける重要課題の一つは、チャネルの連動です。デジタル上のチャネルで顧客を獲得するためには、潜在顧客の母数が多いSNSでキャンペーンを告知して、見込み客をオウンドメディアに誘導し、リードナーチャリングを経てランディングページに送客する、といった仕組みが求められます。
顧客接点を創出する複数のチャネルを保有しているものの、連動の仕組み化ができておらず、見込み客の獲得やサービスの成約に至らないケースが少なくありません。
十分な施策を打てていない
成果を得られない要因として、施策が限定的というパターンが考えられます。例えば、メルマガに登録しているユーザーは購買意欲の高い見込み客といえますが、それのみに注力しても収益性の拡大は困難です。
SNSでのユニークな投稿で幅広い層の潜在顧客にアプローチする、またはオウンドメディアで有益なコンテンツを提供して見込み客のファン化を促進するなど、各チャネルの充実化を図りつつメルマガに誘導するような仕組みが求められます。
データのサイロ化が起きている
デジタルマーケティングの課題として挙げられるのが、データの統合的な管理です。例えば、SNSからオウンドメディアに流入したユーザーがどのような行動を取るのかを分析できれば、そのユーザー動向に基づいて、最適なコンテンツの表示場所やコンバージョン経路などを把握できます。
コーポレートサイトやSNS、ECサイトなどから収集したデータが個別管理されている場合、ユーザー動向や各チャネルへの流入経路、見込み客の属性などを把握しきれない可能性があります。
データの分析スキルが不足している
デジタルマーケティングにおいて、データ分析のスキルは必須の項目です。例えば、代表的なアクセス解析ツールであるGoogle Analytics 4(GA4)では、ユーザー動向をイベントと呼ばれる指標で計測し、ページのスクロール深度やコンバージョン経路、サンクスページの到達数などを分析できます。しかしGA4を使いこなすには、各種パラメータの詳細を理解すると共に、適切なイベントを設定する相応の知識が必要です。
こうしたデータ分析に関する知識やスキルが不足していると、デジタルツールを有効活用できず、効果的な施策を打ち出しにくくなります。
マーケティング施策の効果測定やPDCAが上手く回せていない
デジタルマーケティングではPDCAの継続が重要ですが、評価と改善が不十分なケースが少なくありません。その要因として、手段の目的化や、KPIが未設定であることが挙げられます。あくまでも一例ですが、ランディングページのコンバージョン率を改善する場合、以下のプロセスが必要です。
- Plan(計画):CTA(Call To Action:行動喚起)のABテスト
- Do(実行):複数のCTAを作成・実装
- Check(評価):ABテストの効果測定
- Action(改善):改善策の検討
このとき、アセスメントの対象はコンバージョン率だけではありません。ランディングページの最適化を図るためには、PVや直帰率などのKPIを設定し、コンバージョンに至る全工程の分析が必要です。そして、成果につながったパターンを採用するだけでなく、効果測定に基づくさらなる改善策の推進が求められます。
アセスメントによるデジタルマーケティングの評価例
デジタルマーケティングにおけるアセスメントでは、以下のような項目を調査・分析し、その知見を改善策の立案や戦略策定に活用します。
Webサイト・チャネル分析
Webサイト分析は、PVやUU、直帰率、滞在率、自然検索流入数、流入キーワード、ページのスクロール深度などを調査し、集客からコンバージョンに至る一連のユーザー動向を把握する分析手法です。
一方、チャネル分析はWebサイト分析の上位にあたる分析手法であり、デジタル上のチャネルのみならず、実店舗やコンタクトセンターのようなオフラインも含めた、全てのチャネルの動向を総合的に分析します。
顧客分析
顧客分析は、顧客の属性や商談内容、取引履歴、購入総額、顧客満足度などを調査し、顧客理解の深化を図る分析手法です。オウンドメディアのアクセス履歴やECサイトの購買履歴、SNSのインタラクションデータ、自社アプリの利用履歴といったデータセットがアセスメントの対象となります。こうした要素を調査・分析することで、顧客の行動パターンや心理傾向を理解する一助となります。
競合分析
競合分析は、参入市場における競合他社の動向を調査する分析手法です。競合他社が提供するサービスの長所・短所、製品の市場占有率、売上規模、流通経路、顧客満足度などを調査し、マーケティング戦略の立案・策定における判断材料として活用します。デジタルマーケティングの分野では、競合他社のECサイトやSNSなどの動向を分析し、成功要因の発見や差別化戦略の推進に役立てられます。
まとめ
デジタルマーケティングにおけるアセスメントとは、デジタルチャネルの運用状況を調査・分析し、戦略の立案や策定に役立てる一連の取り組みを指します。アセスメントを実施する主なメリットは、課題の抽出や具体的な改善策の立案、客観的視点に基づく方針の策定に寄与する点です。デジタルマーケティングを推進する際は、各チャネルの連動と施策の充実化、データの統合的な管理、分析スキルの向上などが求められます。
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