デジタルアイデンティティ(デジタルID)とは?
重要性や現状の課題と解決策

 2023.10.04  2023.10.09

セキュリティの安全性確保やサービス品質の向上のため、デジタルアイデンティティ(デジタルID)の重要性はますます高まっています。本記事では、デジタルアイデンティティの概要や重要性について解説します。さらに、現状の課題と、それに対する最新の解決策として注目されている分散型デジタルIDについても紹介します。

デジタルアイデンティティ(デジタルID)とは? 重要性や現状の課題と解決策

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デジタルアイデンティティ(デジタルID)とは?

デジタルアイデンティティ(デジタルID)とは、デジタル世界において特定のユーザーを構成する様々な属性情報の総体です。この属性情報には、氏名、メールアドレス、生年月日、居住地、オンラインでの行動履歴、生体情報など多岐の情報が含まれます。

セキュリティの観点から言うと、デジタルアイデンティティはデジタル世界における身分証明方法のひとつと表現できます。
従来のデジタルの認証情報には、ユーザー名、パスワード、Eメールアドレスなどがありました。これらの情報を組み合わせて、ユーザーの本人確認をするのが認証の基本的な仕組みです。
ただし、こうした従来の認証方法には一定のセキュリティリスクが存在します。例えば、ユーザー名とパスワードによる認証は、それらの情報を所持してさえいれば誰でもクリアできます。
これに対してデジタルアイデンティティは、生体情報や所持品に基づく多要素認証を筆頭に、様々な属性情報や手段を利用して、さらに厳格な本人確認を行うことに特徴があります。ここで重要なのは、デジタルアイデンティティが単なる識別子(Identifier)ではない点です。
本来、識別子とは、単にユーザーを区別するための情報に過ぎず、それ自体が安全性や信頼性を担保するものではありません。他方で、デジタルアイデンティティは識別子に加えて、本人確認と承認のためのメカニズムも兼ね備えており、総合的かつセキュアな身分証明手段として機能します。

そもそもアイデンティティとは何か

アイデンティティは英語のIdentityが語源で、本来は自己同一性などを意味する概念です。要するにアイデンティティとは、自分が他の誰でもない自分自身であることを証明できる状態を指します。

アイデンティティを形成する個々の要素(属性)としては、例えば氏名、年齢、性別、職業、住所、生い立ちなど多種多様な情報ないしは記憶が挙げられます。
私たちは「私は山田太郎だ」「私は会社員だ」「私は2人の子がいる父親だ」などのように、自分が何者であるのかを認識し、アイデンティティを確立しています。

現実世界でのアイデンティティとの違い

現実世界において自分が誰なのかアイデンティティを証明する場合は、主に人と人との対面での関係が想定されているのが一般的です。
この場合、基本的には免許証やパスポート、社員証などの身分証明書が用いられます。これらの証明書には、顔写真、氏名、生年月日、国籍、住所などの個人を特定できる属性が記載されており、これらの情報と目の前にいる当人を照合して本人確認をするのが通例です。

他方で、デジタルアイデンティティの場合に想定されるのは、人ではなく認証システムです。デジタル世界では物理的な証明書を提示するわけにはいかないので、上記のような属性をデジタルデータとして保存・管理し、高度なセキュリティ手段を用いて本人確認を行います。

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デジタルアイデンティティの重要性

前述の通り、デジタルアイデンティティはデジタルの世界において、その人が間違いなく本人であることを区別・証明するために有効です。デジタル化が進む現代社会で、このデジタルアイデンティティの重要性は日増しに高まっています。
昨今、電子商取引(EC)が盛んになり、オンラインバンキングやリモートワークなども一般化しつつある中で、本人確認の正確性と安全性は欠かせません。
お互いの顔が直接見えないオンライン環境では、それに代わる手段で信頼性を確保することが求められます。その点、デジタルアイデンティティを利用すれば、どのような環境でも確実に顧客や従業員が本人であると判断可能です。これは不正アクセスやなりすましを防止し、安全に取引や業務を遂行するために必要不可欠です。
また、デジタル上でサービスを効果的に提供する上でもデジタルアイデンティティは役立ちます。例えばオンラインマーケティングでは、個々のユーザーの様々な属性を加味した上で、パーソナライゼーション(個別最適化)したアプローチをする手法が主流になりつつあります。そのため、デジタルアイデンティティはセキュリティ面だけでなく、自社が顧客へ提供する価値を底上げするためにも重要です。

デジタルアイデンティティをめぐる現状の課題

デジタルアイデンティティの重要性が高まる一方で、現状ではまだ多くの課題が存在していることも否めません。以下では、その主な課題について解説します。

1. 同一人物であることの確認が難しい

現在、多くのオンラインサービスではIDとパスワードによる従来型の認証が主流です。しかし、この方式では同一人物であるという確認が難しく、不正アクセスやなりすましのリスクが高まります。
例えば、あるサービスにログインしてきた人物が、本当にアカウントを作成した当初の人物と同一であるかどうかの判断は困難です。フィッシング攻撃などによってパスワードが漏れており、悪意のある第三者がその情報を使って不正ログインしている可能性は否めません。そのため、こうしたリスクを抑止するさらに高度な認証手段が求められます。

2. 必要以上の情報を取得している

デジタルアイデンティティを確立する過程で、プラットフォーマーが必要以上に多くの個人情報を取得してしまうことも問題のひとつです。例えば、オンラインでサブスクリプションサービスを利用したいだけなのに、会員登録の際に住所や年齢、性別などの情報登録も求められることなどが挙げられます。
こうした個人情報の提供が本当にサービス提供のために必要なのかは、ユーザーと企業どちらの立場に立っても疑問の余地が残ります。必要以上の個人情報の取得はユーザーの不信感を招く上、サイバー攻撃などによる情報漏洩リスクを余計に高めるものです。

3. 多要素認証が利便性を損なわせている

多要素認証は、なりすましや不正アクセスを防ぐためには有効な手段です。しかし、多要素認証を導入すると、利用者の認証手続きが煩雑になるデメリットも同時に発生します。
サービス利用の複雑さは、特にデジタルが苦手なユーザーにとって大きな負担になりがちです。その結果、デジタル・デバイド(情報格差)が生まれ、一部の人々がデジタルサービスから取り残される可能性が高まります。

ブロックチェーン技術がデジタルIDの課題を解決する

デジタルアイデンティティは、その管理と発行の形態に基づいて中央管理型、連合型、分散型の3つのタイプに分類できます。特に注目されているのは、ブロックチェーン技術を採用した分散型のデジタルアイデンティティです。この方式の主な特徴としては、以下の3つが挙げられます。

  1. データの分散管理
  2. 改竄のリスクが極めて低い
  3. 非中央集権的な構造であり、ユーザー自身がデータを管理しやすい

分散型のデジタルアイデンティティは、データが複数のノード(コンピュータ)に分散されて保存されるため、ひとつのノードが攻撃を受けても全体のデータは守られます。
この非中央集権的な構造は、単一のサーバに依存する中央集権型と比較して、サイバー攻撃のリスクを大幅に減少できます。さらに、後述するブロックチェーンの性質上、過去のデータを後から改竄することは非常に困難です。
さらに、分散型のデジタルアイデンティティは、特定の企業や団体による中央管理が存在しない非中央集権的なサービスであるため、個々のユーザー自身で個人情報を管理できるメリットも有しています。これによって、個人情報が不適切に使用されるリスクを最小限に抑えられます。

補足. ブロックチェーン技術とは

ブロックチェーン技術とは、ブロックと呼ばれるデータのまとまりを連鎖的に繋げて保存する方法です。
ブロックチェーン上のデータは多くのノードによって管理されており、各ノードが同じデータを持っています。これによって、一部のノードが攻撃を受けた場合でも、他のノードが正確なデータを保持し続けます。また、後続のブロックは、前のブロックのハッシュ(一意の識別子)を含むため、過去のデータを改竄することは極めて困難です。
このような特性から、ブロックチェーンは分散型台帳とも称され、高度な透明性と信頼性を提供します。分散型デジタルアイデンティティの安全性は、このブロックチェーン技術を応用することで高まっています。

まとめ

本記事では、デジタルアイデンティティの概要や重要性について解説しました。デジタルアイデンティティには現状いくつかの課題がありますが、これについてはブロックチェーンを活用した分散型デジタルアイデンティティが有望な解決策になりえます。分散型デジタルIDは、高度なセキュリティやユーザー自身による情報管理などを可能にします。ブロックチェーン技術の活用が広まるにつれ、この新しい方式のデジタルアイデンティティ管理も普及していくことが期待されます。

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