ビッグデータの身近な活用例は? 活用のメリットや具体例を紹介

 2022.07.21  2024.01.17

IT技術の進化が進む現在、ビッグデータを活用する企業が増加しています。この記事では、ビッグデータの概要や、今注目を集めている理由、活用によって得られるメリット、注意点について解説しています。併せて、ビッグデータの身近な活用例もご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

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ビッグデータについて

ビッグデータはその名の通り、日々収集され膨大になっていく巨大なデータ群としてよく知られていますが、ほかにも大きな特徴があり、その種類もさまざまです。以下ではまず、ビッグデータの概要や特徴、種類について解説します。

ビッグデータとは?

ビッグデータとは、従来のデータベースでは管理・利用が難しいほど膨大なデータ群のことです。ビッグデータにはオフィスデータをはじめ、利用者が書き込む投稿やコメントなどのSNSデータ、オンラインショップの購入履歴などのWebサイトデータ、業務システムにより管理されているカスタマーデータ、デジタル機器から検知されるセンサーデータなどの種類があります。このように、さまざまな形式や特徴を持つ多種多様なデータを含むため、ジャンルに関係なく幅広いデータをビッグデータとして活用でき、各データを連携させて新しい価値を生み出すことも期待されています。

ビッグデータは、その多くがIoT(Internet of Things)によってインターネットを介して日々蓄積されるデータです。蓄積された膨大な量のデータは、人間の手作業での分析・解析が難しいことから、一般的にはAI(人工知能)の優れた処理能力を利用して解析・分析されます。母数の多いビッグデータを分析することにより、これまでよりも分析結果の確度が増し、近未来の予測などが可能になるため、ビジネスに有用な知見が得られ、新しい価値の創造にもつながります。

ビッグデータの「5V」

ビッグデータの特徴は、アメリカのIT調査会社ガートナー社のアナリストであるダグラス・レイニー氏により、「Volume(量)」「Velocity(速度)」「Variety(多様性)」からなる「3つのV」と定義されています。そして、近年これに「Veracity(正確性)」「Value(価値)」を加えた「5つのV」が、ビッグデータの特徴として取り上げられます。

「Volume」は、データの量です。少ないデータよりも数多くのデータを利用して分析を行ったほうが、その事柄の傾向を読み取れるため、予測したデータから適切な対応策を講じることが可能です。

「Velocity」とはデータに関連する速度のことで、データの生成速度や処理速度、更新頻度などを意味しています。

データの多様性を示しているのが「Variety」です。企業の販売データやSNSデータ、表形式、ドキュメント、SNS内のテキストデータ、センサーデータ、音声・動画など、内容や形式などがバラバラという特徴を示しています。さまざまなデータを収集し分析することで、より精度が上がります。

「Veracity」はデータの正確性とされ、データの中に一定の割合で存在する不確実なデータを管理して、より正確性の高いデータに近づけることを示します。

「Value」は、企業にとってのデータの「価値」です。ビッグデータにおける「価値」とは、そのデータが企業に対し、どれだけプラスの影響を与えられるかを意味します。

ビッグデータの種類

ビッグデータは、「構造化データ」「半構造化データ」「非構造化データ」の3種類に分類されます。構造化データはExcelやCSV、固定長などに代表される、列と行の二次元の表形式になっている、もしくは変換が可能なデータです。顧客データや売上データなど、業務システムから抽出される数値や文字列で構成されたデータが該当します。

非構造化データは、不規則に入力されたテキストやPDF、音声、画像、動画などのデータ形式です。データ内に規則的な区切りがなく、Excelなどの表形式に変換できません。SNSのテキストデータやセンサーデータ、GPSの位置情報、Webサイトの閲覧履歴などがこれにあたります。

半構造化データは、XMLやJSONなどのデータ形式です。データ内に規則性についての区切りこそありますが、データの一部だけを見ても表形式への変換が可能かどうかはわかりません。電子メールや書籍など、文字・数値・画像といったデータが混在しています。

現在はIT技術の発展により、センサーやデバイスなどから取得できるデータ、インターネット上から取得できるデータが増えたことから、非構造化データが増加しています。

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ビッグデータが注目される理由

ビッグデータが注目される理由には、収集できるデータ量の急激な増加やIT技術の進歩、官公庁によるデータ利活用の推進などがあります。社会的にデータを活用しやすくなった状況が、ビッグデータへの注目につながっています。

収集できるデータ量が増加

近年になり、ビッグデータが急激に普及し活用される機会が増えた理由には、インターネット利用者の増加やスマートフォンの普及、SNS利用者の増加などが考えられます。多くの人がスマートフォンを利用しているため、高速通信で手軽にインターネットを活用することが可能です。

TwitterやFacebook、LINEなど、SNSの利用者が増えていることもあり、それに伴ってSNSから収集されるデータも急激に増加しました。SNSの書き込みや個人情報などのデータは、新規顧客の獲得や売上の増加につなげられるかもしれない重要なデータです。収集できるデータの量が増えたことにより、これらの膨大なデータを有効活用できるようになりました。

技術の進歩による低コスト化

これまでの技術ではビッグデータの膨大なデータ量に対応できず、活用するには高額の機器を導入しなければなりませんでした。ところが、近年ではIT技術の急速な進歩により、コストを抑えながらビッグデータを効率的に収集し、共有・活用まで行うことが可能になっています。

スマートフォンやセンサーの普及、IoTツールの高速化・低コスト化などにより、費用を抑えて効率よくデータを集められるようになりました。また、収集したビッグデータを保存するストレージや分析ツール、ミドルウェアなどの膨大なデータの活用に必要な技術も、従来と比べて低コストで導入できます。さらに、パソコンの性能向上に加え、大量のデータを分散処理できる技術の開発により、データを複数の機器に分散させて効率よく管理することも可能になっています。

官公庁によるデータ利活用の推進

2016年には、ITの進展による社会の変化に対応し、民間企業と国や自治体などが相互に有用なデータを共有・処理できる社会の実現を目指して、「官民データ活用促進基本法」が制定されています。本法の制定により、国や地方自治体が収集・管理しているデータがオープンデータとして公開され、民間企業や個人など誰もが二次利用できるようになりました。

このオープンデータも、民間企業のビッグデータ活用を後押ししています。オープンデータには、景気動向指数や若者の生活に関する調査など、国や地方のさまざまなデータがあるため、企業はデータを分析して経営戦略の策定などに有効活用できます。

ビッグデータ活用のメリット

ビッグデータの活用には、新たなビジネスチャンスを創出できる、現状把握やマーケティング施策の効果検証の精度を高められる、といったメリットがあります。ビッグデータ活用により社会や経済の予測精度を高められるため、ビジネスの効率向上が期待できます。

新たなビジネスチャンスを創出できる

ビッグデータの分析により、市場の動向や消費者のニーズを把握することが可能です。ビッグデータの活用には、さまざまなデータを組み合わせて総合的に分析することで、既存製品への評価や消費者の趣味・嗜好といった傾向をつかめるメリットがあります。

自社のデータや競合他社のデータ、消費者のデータなど、関連するデータをさまざまな手法で分析して組み合わせることにより、企業が新たなビジネスチャンスを発見し、新商品の開発や新サービスの展開につなげられます。

現状を高精度で把握できる

ビッグデータは、膨大なデータを収集してデータベースを高い頻度で更新しているため、常にリアルタイムのデータを確認することが可能です。また、膨大なデータをもとに分析を行えるため、消費者の消費行動の傾向を高い精度で把握できます。

リアルタイムのデータをもとに高精度な分析ができるため、現在よく売れている商品や閲覧されている商品など、ビジネスに役立つデータの把握につなげられ、効果的なマーケティング施策の立案から売上向上が期待できます。

高精度の効果検証ができる

リアルタイムに確認できるデータを活用することで、商品やサービスの展開後に、その効果を高い精度で検証することも可能です。マーケティング施策を策定する時点で、データを収集・蓄積・分析できる環境が構築されていると、施策の実施後に同様のデータ分析が行えるため、手間をかけることなく効果検証が行えます。

マーケティング施策においては、実行後にその効果を検証して課題を解決し、より効果のある施策に改善していくことが大切です。ビッグデータを活用した高精度の検証は、施策の分析に効果的で、注意が必要なビジネスの課題解消に活用できます。

ビッグデータの身近な活用例

ビッグデータは、さまざまな業界で活用が可能です。飲食業界や小売業界、農業業界、スポーツ業界などのあらゆる分野で、得られたデータから今後を予測し、効率的な営業活動を行えます。

飲食業界における活用例

飲食業界では、お店のレジで購入記録を残すIDレシートと、膨大なデータの分析を行うBIツール(Business Intelligence)の利用によるビッグデータ活用が行われています。IDレシートで売上のあった商品と注文した人の属性、季節や曜日などあらゆるデータを蓄積し、BIツールで得た分析結果をもとに営業活動の改善につなげられます。

飲食業界の場合、各店舗のデータだけでは分析が行えないケースも多くありますが、グルメ情報サイトを営むある企業では、自店のみのデータでは不足している場合に活用できるよう、蓄積された店舗情報・ユーザー情報などの分析結果をインターネット上で公開しています。売れやすいメニューや来店客の年齢層など、分析可能なツールをオンライン上で提供しているため、ツールを活用して分析データの精度を高め、売上向上のためのマーケティング戦略立案が可能です。

小売業界における活用例

小売業界では、市場分析と顧客の興味・関心の把握が重要です。商品の購買履歴や年齢・性別などの属性データ、気象・季節などの環境データを活用することで、ターゲット層を特定して最適なアプローチを行えます。

実際、ある企業は環境データを用いた予測分析に取り組み、季節ごとに商品の販売傾向の把握を可能にしました。仕入れと在庫の管理を正確に行い、売上機会損失を防ぎ、無駄な在庫の発注を削減したことにより、売上向上とコスト削減が実現しています。

また、Googleの公表データやオープンデータなどから、人の移動状況や消費動向など消費者の動きに関連するデータを取り入れた企業もあります。その企業は、これらのビッグデータを分析し、消費者の行動予測からニーズに合わせた営業時間の設定を行い、安定した売上を確保しています。

観光業界における活用例

観光業界では、GPSを活用した位置情報のビッグデータが使用されています。スマートフォンやタブレットが普及している現在では、端末のGPS機能により位置情報のデータが蓄積されて、人々の行動が把握できるようになりました。SNSの利用者が増加したことにより、SNS投稿時の位置情報や投稿内容をデータとして蓄積し、観光客の行動パターンを分析する活用例も見られます。

また、ある観光事業者はスマートフォンのアプリを活用し、観光客の利用履歴を蓄積した分析を行っています。利用履歴から観光客の混み合う時間帯や人気のお店、家族連れ・カップル・友人といった観光客の構成などを把握して、街づくりやサービス、広報活動などにデータを活かし、売上増加につなげています。

教育業界における活用例

教育業界では、パーソナライズされた教育の提供や、教材の最適化などにビッグデータが活かされています。教育のデジタル化によりデジタル教材の学習記録分析を活用した例では、収集された学習履歴を分析して、理解度に合わせた教育を提供し、学生の特性に適した職業判断などを可能にしました。データ分析により学習教材の最適化も実施できるため、将来の高品質な教育につなげられます。

また、ビッグデータ活用により学習意欲と成績の関係を分析・検証した例もあります。eラーニングシステムを導入して、学習の区切りに合わせて子ども達へアンケートを行い、学習態度と成績の関係性を調査したのです。その結果、学習意欲が低い子どもに対して教師や保護者がフィードバックを行うと、フィードバックの回数に比例して意欲や成績が向上したことがわかりました。教育業界では、今後も成績向上に向けたアプローチ方法の検証など、さらなるビッグデータの活用が予定されています。

農業業界における活用例

農業においては、ビッグデータ活用により作物の収入予測の実現を目指す取り組みが行われています。消費者からの評価が高い農家に農業向けIoT機器を導入し、畑の土壌データや空気・気候・日照量などの環境データを取得することで、ビッグデータから顧客の評価を予測するシステムを構築しています。データからの収入予測が実現すれば、長年の経験や勘に頼る必要がなくなり、新規就農者や新規作付けなどのリスクを減らしつつ、経済的な安定を目指すことが可能です。

また、民間企業との連携で、人工衛星の画像データから米の味を予測するシステムを開発した地域もあります。その地域では、画像データから米のタンパク質含有量を予測して、最適な収穫時期を判別し、ブランド化により価値を高めて販売することで、収益の増加を実現させました。

金融業界における活用例

金融業界におけるビッグデータの活用は、クレジットカード情報に基づく顧客行動の分析や、企業への融資査定、相場の解析などが主です。効果的な営業活動を可能にした活用例が、オンライン決済・投資の履歴やSNS上の行動といったデータを幅広く収集し、有力な顧客を見つけてターゲットを絞り込むマーケティング戦略です。この例では、ターゲットとしていた顧客の確保だけでなく、その周囲へのアプローチにより、マーケティングの効率化も実現しています。

また、損害保険データの分析・可視化を実現し、ビッグデータから新しい価値の提供を目指している例もあります。IT技術の発展や自然災害の増加など、社会の変化により多様化するリスクに対応した商品を開発するため、過去のデータや顧客データ、取引先のデータなどさまざまなデータを組み合わせ、幅広い予測を可能にしています。

スポーツ業界における活用例

選手育成や試合の際の戦略立案など、スポーツ業界でもビッグデータの活用が進んでいます。現在では、ビッグデータの解析をスポーツの解説に活用するシステムも導入され、データにもとづいてスポーツを楽しめるようになりました。野球関連のスポーツ番組で活用されるシステムでは、膨大な打席データを機械学習したAIにより、試合の勝敗や配球予測などが実現しています。

旅行業界における活用例

旅行業界で主に使用されているのが、スマートフォンのGPS機能による移動データです。旅行者の移動データからは、観光地での行動パターンやトレンドなどが把握できるため、消費者のニーズに対応したプランづくりに役立ちます。競合会社を地図に登録し、キャンペーン時の消費者の動きを分析することで、キャンペーンの効果検証も可能です。

さらに、検索エンジンで検索されたデータを用いて分析すると、現在旅行を考えている消費者のニーズも把握できます。検索結果から分析された結果を旅行会社に提供している例もあり、旅行業界の活性化につながっています。

自治体・行政における活用例

自治体・行政においてビッグデータは、地域や分野ごとの課題を発見し、政治判断の材料にするため活用されています。課題解決のために公共サービスの品質向上が実現し、人々の生活を支えるために役立っています。

また、開示されているオープンデータも、行政の保有するビッグデータのひとつです。データを公開して企業の二次利用を促し、経済を活性化させる目的もあり、さまざまな活用方法が期待されています。

このほか、交通データの分析を交通安全対策・渋滞緩和に役立てている地域もあります。企業と提携して交通データを分析することにより、交通安全対策や渋滞緩和などの効果が得られました。ドライバーの協力による走行時の速度や行動分析も加えて、より詳しく道路状況を把握したことで、道路にミラーを設置するなど適切な整備の実施を可能にし、交通事故数の減少を実現しています。

ビッグデータを活用する際の3つの注意点

ビッグデータの活用にあたっては、いくつか注意点もあります。適切に運用しなければ正しい分析結果が得られないばかりか、データ流出につながるリスクもあるため、以下のポイントをしっかりと押さえておきましょう。

セキュリティ対策をしっかりと行う

ビッグデータには顧客情報が含まれているケースが多いため、セキュリティ対策は十分に行わなければなりません。購入履歴や顧客の個人情報に関する膨大なデータが流出すると、個人データはもちろん、データの組み合わせによっては個人のプライバシーまで侵害される場合もあります。第三者に顧客情報が漏れることを避けるため、ネットワークなどのセキュリティを万全にしておく必要があります。

また、利用者にはプライバシーポリシーの提示を行うことと、顧客側が自分の情報を管理・コントロールできる状態にしておくことも大切です。

適切なデータで分析を行う

膨大なビッグデータの中には、分析に適さないデータが含まれているケースもあります。欠損値や表記ゆれを含んでいたり、データが重複したりすることもあり、これらのデータはそのままでは分析に活用できません。データを確実に活用するためには、データクレンジングを行う必要があります。

データ自体に問題がない場合でも、分析するために抽出したデータが分析の目的に合っていないケースもあるため、抽出する時点で目的に適したデータかどうか確認することが大切です。目的に合ったデータを適切に選んで抽出することで、分析の精度を上げられます。

社内全体でのデータ整備を行う

データの整備は社内全体で行う必要があります。というのも、部門によって取り扱うデータが異なっていると、たとえ部門ごとの管理体制には問題がなくても、部門横断的なデータ分析が行えないからです。そればかりか、社内全体のデータをまとめて活用できず、さまざまな問題につながりかねません。データの整備は社内全体で行い、どの部門も同じデータを共有できる一元的な管理方法を取り入れることが重要です。

今後のビッグデータ活用について

ビジネスに活用され、さまざまな効果を上げているビッグデータですが、5GやAIなど新しい技術との組み合わせにより、さらに利便性が向上すると予測されています。人手をかけずに画像や音声データの分析・整理を行えるなど、活用しやすいツールに進化すれば、より幅広い分野への応用も可能でしょう。将来的には、技術の進化によってビッグデータの活用範囲が広がり、あらゆる分野で業務効率化や新しい商品・サービスの創出に役立てられることが期待されています。

まとめ

ビッグデータはIoT機器やSNS、Webサイトなどから収集される、膨大かつ多種多様なデータ群のことです。AIなどのIT技術を活用して精度の高い分析結果が得られるため、分析結果をビジネスのマーケティング戦略策定などに有効活用できます。

ビッグデータには顧客データや購買データ、GPSデータなど、さまざまな内容のデータが含まれます。必要なデータを適切に選んで分析することで、さまざまな業界に活用でき、業務効率化や価値創出などにつなげられるでしょう。

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