ビッグデータの活用事例とは?
ビジネスでの活用のメリットや重要性を解説

 2022.08.03  2024.01.17

DXに取り組む企業が増える中、ビッグデータがどのようにビジネスにおいて役立つのか関心を持つ方も多いことでしょう。そこで本記事では、業種別のビッグデータの活用事例や活用メリットをご紹介します。ビッグデータに関する基本的な説明から解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

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ビッグデータとは?

ビッグデータとは、さまざまなソースから収集・蓄積される多種多様かつ膨大な量のデータです。どこからが「ビッグ」なデータかは相対的なものですが、現在では数十テラバイト以上の規模のデータからビッグデータと呼ぶ場合が多いでしょう。ビッグデータを解析することで、ビジネスに役立つさまざまな情報を得られることから、現代企業の多くはビッグデータを貴重な情報資産とみなして非常に重視しています。

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ビッグデータにおける5つのV

ビッグデータの特徴をさらに詳細に述べるためのキーワードが、以下に挙げる「5つのV」です。

  • Variety(多様性)
  • Velocity(速さ)
  • Volume(量)
  • Veracity(正確性)
  • Value(価値)

続いては、それぞれのVが表しているビッグデータの特徴を解説していきます。

Variety(多様性)

ビッグデータはWordやExcel、PDF、画像、動画など、さまざまなコンテンツから構成される「多様性」を持っています。これは、ビッグデータがいくつもの形式のデータを含んでいるからです。また今日では、システム・ネットワーク・ソーシャルメディア・スマートフォン・IoT機器など、データソースの多様化も急激に進んでいます。

Velocity(速さ)

今日のデータは、いくつものソースで絶え間なく生成されて流れてきます。したがって、データの増加ペースは以前と比べて非常にスピーディーです。また、こうしたデータは可能な限りリアルタイムに活用できると効果的ですが、そのためのデータ処理技術も今は整っています。つまり、ビッグデータは従来のデータと比べて、あらゆる点で「速い」のです。

Volume(量)

ビッグデータの特徴といえば、やはりそのデータ量の膨大さです。絶え間なく生成・取得される多種多様なデータのかたまりであるビッグデータは、従来の方法では処理することが困難なほどの「量」を誇ります。

Veracity(正確性)

ビッグデータを実際に活用するにあたっては、その「正確性」も重要なポイントです。この正確性とは、収集したデータの品質や信頼性を指します。収集したデータから有用なインサイトを得るには、そのデータに十分な信頼性があることが重要です。

Value(価値)

大量に生み出されるビッグデータですが、ただ集めるだけでは意味がありません。ビジネス上の洞察をもたらすデータこそが、企業にとって「価値」あるデータなのです。ビッグデータにおける「価値」とは、そのデータが企業のビジネスに対し、どれだけプラスの影響を与えられるかを意味します。

ビッグデータの3つの種類

5つのVのひとつである「Variety(多様性)」が示すように、ビッグデータには「構造化データ」「半構造化データ」「非構造化データ」といった複数のデータ形式が含まれます。以下では、各種類のデータの特徴を解説します。

構造化データ

構造化データは、すでにデータベースに秩序だって保存されているデータを指します。ビッグデータの中で最も扱いやすいのは、この構造化データです。ExcelやCVSなど、行と列で管理する二元的なデータは構造化データの典型例です。

半構造化データ

半構造化データとは、簡単にいうと構造化データと非構造化データの中間に位置するデータタイプです。より正確にいえば、特定の部分だけが構造化している非構造化データを指します。XMLやJSONなど、表形式にはならないデータが半構造化データの事例です。

非構造化データ

画像ファイル・音声ファイル・テキストファイル・動画ファイルなど、二元的に変換できないデータはすべて非構造化データに分類されます。ビッグデータの大部分は、この非構造化データです。非構造化データは生のままのデータであるため、そこからインサイトを取り出すためには構造化データよりも高度な技術を要します。

ビッグデータが注目される背景

ビッグデータが現在これほど注目されるに至ったのは、ICT技術全体の発展および普及が前提となっています。20世紀後半からコンピューターは家庭でも使える「パソコン」になり、21世紀に入る頃にはインターネットも普及し始めました。これにより世に出回るデータ量は爆発的に増え、さらにスマートフォンやSNSの普及などがそれに拍車をかけています。

もちろん、増大したデータを保管するストレージ技術の進化も重要な点です。今では、ほんの小さなメモリーカードにも数十~数百ギガバイトのデータを当たり前に保存でき、企業が所有するサーバーやデータセンターに至っては桁違いのデータが蓄積されています。さらにはクラウド技術の登場によって、誰もが低コストで従来以上のデータをクラウドストレージに蓄積できるようになりました。

生成されるデータ量や蓄積できるデータ量が加速度的に増えていくにつれ、そのデータがビジネスにとって価値ある情報を含んでいることに着目する企業が増えていきました。特に近年では、データ分析ツールなどの進化も進んでおり、ビッグデータを扱うためのハードルが低くなってきたことも、ビッグデータの活用に取り組む企業が増えている一因となっています。

このようにビッグデータの進化と注目度は、情報化社会の進展とともに強まってきました。近年注目を集めている「DX(デジタルトランスフォーメーション)」も、ビッグデータの存在があってこその概念です。

ビッグデータを活用する重要性

ビッグデータの活用が重要視されているのは、ビジネスにとって価値ある情報がそこに数多く含まれているからです。たとえば、新しい製品・サービスを開発したり、マーケティングをしたりするとき、ビッグデータの分析によって顧客ニーズを探ることで、企業は定量的なデータに基づいて顧客が欲しいものを欲しいときに提供する力を得られます。

そして、これはビッグデータの活用法の一例に過ぎません。ビッグデータを活用し、そこから有用な情報を抽出することで、企業はよりスマートなビジネス展開、より効率的な業務、より高い利益、顧客のより深い満足感につなげることが可能です。ビッグデータの活用法はビジネスシーンだけではなく、医療・教育・社会保障などの分野でも積極的に模索されており、今後ますます多くの企業・組織が活用を進めていくものと予想されます。

メリット

ビッグデータが企業にもたらすメリットは、その活用可能性の広がりを反映して実にさまざまです。

まずビッグデータは、企業がよりスマートな意思決定を行うためのさまざまなヒントを提供します。つまり、思い込みや直感ではなく、データに基づいた意思決定、ひいては「データドリブン経営」を可能にするのです。

リアルタイムに更新されるビッグデータに基づく意思決定は、ビジネスプロセスの高速化を促進し、顧客ニーズにタイムリーに応える迅速な意思決定を実現します。同時に、ビッグデータは自社の現状やビジネス上の課題・異変を素早く把握し、よりよい意思決定を行う助けにもなります。たとえば、自社の業務プロセスをデータ分析すれば、経営陣は組織の生産性向上やコスト削減、業務効率化などに役立てられるでしょう。

活用方法

ビッグデータの活用法は、主に「データ収集」→「データの整理」→「分析」の3ステップで進められます。

ビッグデータを活用するには、そもそも膨大なデータを集める手段と、その集めたデータを蓄積するための保管場所が必要です。この点、データの収集手段としてはIoT技術が、ストレージツールとしてはデータ活用を前提としたデータレイクやデータウェアハウスなどが昨今重要視されています。

また、データの整理を行うことも欠かせません。ビッグデータはたしかに多種多様なデータを含みますが、それはビジネス上のニーズに即す限りにおいてです。データ整理においては、そもそも手元にあるデータが何なのかを可視化することはもちろん、ノイズになりうる余計な情報をデータから取り除き、データの品質や粒度を整えることが重要です。

ここまで事前準備をして、ようやくデータ分析に移ります。整理・加工したデータを使い、特定の目的に応じて分析します。データ分析においては、定量的なデータだけでなく、定性的なデータが役に立つ場合もあります。データ分析の実行にあたっては、BIツールなどの活用が一般的です。

【業界別】ビッグデータの活用事例

続いては、ビジネスシーンに限らずビッグデータがどのように活用されているか、業界別の活用事例を解説していきます。

製造業

製造業は、「スマートファクトリー」や「インダストリー4.0」などに象徴されるように、ビッグデータをはじめとしたICTの活用が最も期待される分野のひとつです。製造業においては、とりわけIoT技術を駆使してリアルタイムにデータを収集・分析することにより、生産性の向上や運用の効率化、コスト削減、安全性の向上などの効果を期待できます。

たとえば予知保全においては、機器の年式・メーカー・モデル・耐久年数などの静的なデータや、IoTセンサーからリアルタイムに収集されるデータなどにより、異常の早期発見やメンテナンスの最適化を可能にします。また、予実管理においては、生産計画における目標と実績を照らし合わせて問題点を洗い出し、改善策を実施するための判断材料としてデータは欠かせません。さらに製造工程以外でも、マーケティングや調達などとの連携においてデータは重要な役割を果たします。

医療業

医療業界も、さまざまな領域でビッグデータの活用が見込まれる分野です。医療業界においては長年、医師をはじめとする現場の人材不足が問題視されており、少人数体制でも高品質な医療サービスを実現できるようなソリューションが求められています。したがって、昨今では健康・病気・医療・介護についてのデータを集めるプラットフォームを構築し、病院や研究機関、民間企業が目的に応じて活用できる仕組みづくりが模索されているのです。

また、臨床の現場においてビッグデータは、すでに病気の特定などに大きく貢献しています。たとえば、過去の膨大な統計データを分析することで、インフルエンザなど定期的に流行する病気の発生や影響範囲を予測し、予防策を講じることが可能です。あるいは、大量の医療画像データをAIに機械学習させることで、人間の目では感知できない病変を特定する技術も、すでに実用化されています。

小売業

小売業においてビッグデータは、商品予測や需要予測、店舗内の最適化など、小売プロセスのあらゆる段階で活用されています。たとえば、顧客にとって品ぞろえのよい店をつくることは、小売業が成功するために不可欠な要素ですが、ビッグデータを活用してマーケティング分析することで、顧客ニーズを予測できます。

そもそもお店を開店する前に、そこがビジネスに適した立地なのかどうかを判断するにも、データ分析は非常に重要です。さらに、欠品による機会損失や廃棄ロスを避けるには、データに基づいて需要を分析し、商品の仕入れや生産量を調整して、在庫管理を最適化することが欠かせません。このようにビッグデータを活用することで、小売業は自社のビジネスの成功可能性を底上げできるのです。

ECサイト

ECサイトは、ビッグデータが活用される代表的なビジネスシーンです。たとえば、ECビジネスにおけるAmazonの覇権は、まさにビッグデータの活用がもたらした代表的な成功事例といっても過言ではありません。ECサイトにおいては、顧客の購入履歴やサイト内の行動データ、サイトへの流入元、競合サイトの情報など、あらゆるデータが分析の対象になり得ます。

たとえば、顧客の購入データと競合他社を比較・分析すれば、よりよい価格設定を検討するヒントになるでしょう。また、購入履歴や閲覧履歴などからターゲットのニーズを分析し、それに即した効果的な広告を表示するのは、ECサイトの基本的な手法です。そのほか、サイトのUI改善などの面でも、収集されたデータは役立てられます。

教育業

教育業は、今後ビッグデータの活用が期待されている業界のひとつです。たとえば近年の日本では、すべての学校とすべての生徒に学習用デバイスを配布する「GIGAスクール構想」が実施されていますが、この目的のひとつには、教育・学習のデジタル化によって、そのデータを教育に利活用することがあります。

電子化によって成績・学習履歴などを一元的に可視化・管理できるようになれば、一人ひとりにパーソナライズした教育・教材を提供し、学習効果の改善が可能です。実際、教育サービスの大手ベネッセグループでは、専門の分析センターを設立して教育ビッグデータの活用に取り組み、自社のサービス向上に役立てています。

金融・銀行業

金融・銀行業も、ビッグデータの活用が進む業界です。そもそもクレジットカードという新しい取引手段の存在自体が、今日のビッグデータ時代の先触れであったともいえます。瞬時にユーザーの信用情報や残高情報に交信・照会・決済する電子決済の仕組みは、それ自体がデータ活用の身近な事例なのです。

もちろん、金融機関におけるデータ活用の取り組みはそれだけではありません。たとえばリスク評価は、金融業界では非常に重要なものです。銀行は融資先や投資先について細心の注意を払わなければならず、そのために市場の動向などを精緻にデータ分析しています。そのほかにも、サービスの向上や不正の検知・予防対策、顧客ターゲティングの向上など、金融機関におけるビッグデータの用途は多岐にわたります。

旅行・観光業

旅行観光業においてビッグデータは第一に、顧客ニーズの分析に活用されています。つまり、顧客の検索結果などから人気のある観光地を特定し、自社の提供する観光プランなどに反映しているのです。これは集客効果と顧客満足度の両面に直結する重要な施策です。

また、乗換案内や地図検索などのナビサービスを提供する企業では、GPSによる位置情報データを活用して、旅行者の移動や観光地の混雑状況などを分析しています。このデータの活用により、交通手段の最適化や地域の活性化などが期待されます。

政府

政府も企業と同様に、さまざまなデータが取り扱われる場所です。政府のもとには国家運営や国民生活にかかわるさまざまな情報が日々流入し、蓄積されていきます。政府は、そうして蓄積される記録やデータを政治に有効利用するだけでなく、民間にも開放することでビジネスでの利用を可能にしているのです。

また、日本政府は近年、ビッグデータをはじめとするICTを都市や地域の問題解決に役立てる「スマートシティ」事業を推進しています。スマートシティにおいては、たとえば交通データに基づいて交通渋滞の緩和対策をしたり、過去の災害データを参考に災害に強いまちづくりをしたりなど、市民生活に直結する多くの問題が改善されることが期待されています。

農業

意外かもしれませんが、農業もデータ活用が非常に期待されている業界のひとつです。昨今では、ICT技術を駆使した「スマート農業」が注目されており、農作業の効率化・自動化が進められています。

たとえばIoTセンサーなどを用いて、作物の生育データやビニールハウス内の気温・湿度データなどを管理して栽培を行い、AIカメラなどで熟度を判断し、ロボットに収穫させるといった形です。農業の人材不足は日本の懸念事項ですが、スマート農業が今後確立すれば、この問題は改善され、生産性向上と食糧の安定供給の実現が期待できます。

飲食業

離職率の高さや生産性の低さが課題とされる飲食業は、それゆえになおさらビッグデータの活用が今後望まれる業界です。飲食店におけるビッグデータの活用事例としては、時間帯別の来客データや天候などの環境データを活用して、来客数を予測するなどの取り組みが考えられます。

こうした事前予測ができれば、事前に人材を最適に配置したり、食材の事前準備をしたりして、ラッシュ時の多忙さの緩和が可能です。あるいは、閑散時の無駄な人件費の発生を抑える効果も見込めるでしょう。このような取り組みによって、生産性や業務効率の向上はもちろん、従業員の離職率の低下なども期待できます。

ビッグデータを活用する際の注意点

最後に、ビッグデータを活用する際の注意点について解説します。

増大なデータの管理運用

まず重要なのは、膨大なデータの管理運用手段を明確にすることです。基本的な方針としては、データ管理システムを活用し、一元管理するのがおすすめです。逆に、さまざまな場所にデータが散在するような形になってしまうと、せっかく集めたデータを全社的にフル活用することが困難になってしまいます。

また、データ管理においては、「必要なデータ」「不要なデータ」「要不要が不明のデータ」に分類するようにしましょう。この3種のデータが混在していると、必要なデータを探す際に余計な手間がかかることになります。特に不要なデータはストレージを圧迫し、余計なコストを発生させる原因にもなります。そもそもの時点で不要なデータを余計に増やさないためには、なるべく目的に合ったデータの収集・活用を心掛けることが大切です。

セキュリティ対策

ビッグデータを扱う際には、セキュリティ対策も重要です。膨大なデータの中には、個人情報などの慎重な扱いを要するデータが含まれていることもあるでしょう。そうしたデータ万一外部に不正流出などしてしまえば、企業の社会的信用に深刻な傷がつくことも懸念されます。

したがって、そうしたセンシティブな情報を取り扱う際は、しっかりとリスク管理を行わなければなりません。特に、データを集約して移動させる際はサイバーセキュリティリスクが発生しやすいので、注意が必要です。データを安全に保護するためには、たとえば重要な情報には職務上必要なとき、必要な人のみアクセスできるようにするなど、厳格なポリシー設定をすることが大切です。

技術者の不足

ビッグデータを扱う際の前提として、データ活用に詳しい高度なスキルを持った人材が必要なのも注意点です。とはいえ昨今では、高いスキルを持ったIT人材は需要過多であるため、外部から引っ張ってくるのはなかなか困難かもしれません。したがって、外部の人材を探しつつ、自社の社員育成にも積極的に取り組むことがおすすめです。

また、そのほかの注意点として、ビッグデータの活用は最初からすべてうまくいくと期待してはいけません。ビッグデータの活用は、継続的にデータ収集や効果検証を行っていく中で精度を上げていくものです。早く結果を出したいからといって焦らずに、根気強く取り組みましょう。

まとめ

ビッグデータはICT技術の発展とともに、ビジネスにおける影響力を増してきました。その結果、現在ではさまざまな業種・業界の企業がビッグデータの活用に取り組んでおり、この流れは今後ますます加速していくものと思われます。本記事でご紹介した活用事例などを参考に、ぜひビッグデータの活用に取り組んでみてください。

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