LLM(大規模言語モデル)とは?
仕組み・活用分野・現状の課題を解説

 2023.10.31  2023.11.09

近年、人工知能の中でも特に注目を集めているのが「LLM(大規模言語モデル)」です。その高い能力の背後には、どのような仕組みが働いているのでしょうか。また、LLMには現状どのような利点や欠点があるのでしょうか。本記事では、LLMの仕組みと活用分野、そして現状の課題をわかりやすく解説します。

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LLM(大規模言語モデル)とは?

LLMとは“Large Language Models”の略で、日本語にすると「大規模言語モデル」を意味します。AIにインターネットなどから取得した膨大なテキストデータを学習させ、その知識をもとに、文章生成などの自然言語能力の開発・向上に役立てるディープラーニング技術です。

LLMを理解するには、そもそも言語モデルの概要を把握する必要があります。言語モデルとは簡単に説明すると、ある単語やフレーズのあとに続く単語の出現確率を計算するモデルです。例えば、「おはよう」という言葉のあとに「ございます」と続く確率は高い、といった具合です。

そして、LLMは「大規模(Large)」と称されている通り、機械学習で用いられる計算量・データ量・モデルパラメータ数という3つの要素が大規模化されているのが特徴です。これによって、複雑で精緻な文章を生成したり、多岐にわたる質問に対して自然な文章で応答したりできます。

このような特性をもつLLMは、生成AIの中でも非常に高い性能を誇ります。例えば、最新鋭の生成AIとして注目を集めているChatGPTが、人間と遜色ない自然さで言葉を使いこなせるのは、まさにLLMの力によるところが大きいでしょう。

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LLMの仕組み

LLMは、どのような仕組みによって成立しているのでしょうか。

まず、LLMの基盤となるのは、事前に集められた大量のテキストデータです。これらのデータから、単語やフレーズがどのように連なるか、どのような文脈で使われるのかといった出現パターンを学習します。この段階はいわば、人間の言語使用パターンを吸収するフェイズです。

学習が進むと、検証用のデータセットでモデルの性能をテストします。このテストの目的は、モデルが正確に情報を処理しているか、また適切に文章を生成する能力があるかを確認することです。この検証をもとに、モデルを微調整していきます。

LLMが文章を処理する際の第一歩は、入力されたテキストをトークンと呼ばれる単位に分割することです。このトークンは、単語をはじめとする言語の最小単位を指します。分割された各トークンがもつ文脈を理解することで、その後の文章生成のための情報を取得します。

文脈を理解したトークンは、エンコードと呼ばれるプロセスで数値情報(特徴量)に変換されます。このエンコードされた情報をもとに、LLMはデコードというプロセスを通して新しい文章を生成します。このエンコード→デコードの繰り返しを通じて、LLMは私たちの質問や指示に応じた文章を生成して出力する形です。

このような一連の流れによって、LLMは膨大な情報を処理し、AIが多様かつ自然な文章を生成することを可能にします。

LLMが活用されている分野

LLMは比較的新しい技術ですが、既に様々な分野で急速に活用が広がりつつあります。

検索エンジン

LLMの代表的な活用例の一つが、検索エンジンです。検索エンジンには、ユーザーが入力したキーワードの背後にある意図を正確に捉え、それに応じた適切な検索結果を表示する能力が求められます。その点、LLMを活用することで、キーワードの組み合わせに応じて、ユーザーの意図に適した検索結果を表示しやすくなります。このように、LLMの高度な文脈認識能力は、ユーザーの検索経験をより質の高いものにするために有用です。

チャットボット

チャットボットにLLMを搭載することで、ユーザーとのコミュニケーションをより自然かつ効率的に進められます。というのも、LLMには言葉の文脈やニュアンスに応じて、相手の意図を正確に読み取る能力があるためです。これによって、チャットボットは人間同様に相手の意図や気持ちに合わせた対話を展開することが可能となり、結果として顧客満足度の向上や、人間のオペレータの負担軽減を実現します。

機械翻訳

機械翻訳も、LLMが活用されている分野です。ひと昔前の機械翻訳が典型的だったように、自然な翻訳をつくるには、個々の単語に辞書の先頭に出てくる意味を機械的にあてがうような仕方では足りません。重要なのは、文化や文脈の違いを理解し、それを適切に反映した文章を生成することです。そこで効果を発揮するのが、文脈を精緻に分析できるLLMの力です。LLMを採用することで、従来よりも格段に精度の高い翻訳を実現できるようになります。

文章校正

文章の校正作業も、LLMの力を借りることで大きな変革を遂げられる分野です。LLMは学習能力や予測能力だけでなく、文章の補完能力にも優れています。これは、ユーザーが入力する文書の意図や文脈を理解することで、その文脈で使用されるべき言葉が適切に使われているか判断できるようになるためです。人間の手作業だと難易度や負担が大きい校正作業も、LLMを活用すればAIに効率的かつ高い精度で任せられます。

LLMの現状での課題

LLMは、まだいくつかの課題を残している発展途上の技術です。したがって、LLMを活用する際には、以下の点に注意が必要です。

生成した内容の正確性

LLMは驚異的な文章生成能力を有しますが、それが常に100%正確であるとは限りません。その原因の一つは、LLMが学習する情報に含まれる誤りやバイアスです。もし、学習データに誤った情報や偏見が含まれていれば、LLMの出力もそれに影響される可能性があります。特に、LLMが実在しない情報や事実を生成する現象はハルシネーションと呼ばれます。

そのため、LLMを利用する際は、その回答が間違っている可能性に留意しなければいけません。とりわけ重要な事柄については、人間の手でその正確性を確認することが必要です。

プロンプトインジェクションのリスク

プロンプトインジェクションも警戒すべきリスクです。これは、利用者が特定のプロンプトや質問を用いてLLMを誘導し、開発者が意図しない回答を引き出そうとするものです。具体的には、機密情報の抜き取りなど、悪意ある行為に利用される可能性が考えられます。

LLMをビジネスやサービスで活用する場合、このようなプロンプトインジェクションに対する十分な対策や、ガイドラインの策定が重要です。

学習データの偏りによるバイアス

LLMは膨大な量のテキストデータをもとに学習しますが、そのデータの質や偏りはモデルの出力に大きく影響します。例えば、LLMの学習データが英米圏の情報源に依存している場合、アジアやアフリカの文化や歴史、価値観などの知識や、それらを反映した回答は相対的に乏しくなるということです。

このようなデータの偏りによって、AIの回答に、特定の視点や価値観に基づくバイアスが生じることが懸念されます。したがって、LLMを導入する際は、データの質や多様性に注意を払い、必要に応じて補完や調整を行うことが重要です。

言語による精度の違い

上記の学習データの偏りと関連して、LLMの精度は言語ごとに異なることが既に指摘されています。具体的には、英語は非常に高い精度での動作が期待される一方で、それ以外の言語、特にマイナーな言語では精度が下がるとされています。

この問題が生じる主な原因は、インターネット上のデータにおける言語ごとのボリューム差です。とはいえ、この問題解決に向けた取り組みは今も進んでおり、既に一定の改善効果が出始めています。

まとめ

LLM(大規模言語モデル)とは、膨大なデータセットをもとにディープラーニングの技術を活用して構築される言語モデルです。LLMは既に、検索エンジンをはじめとする多様な分野で活用され始めています。とはいえ、LLMはまだ完璧な技術ではなく、生成内容の精度や正確性、偏りなどについては課題が残るため、今後の進展が期待されます。LLMをビジネスに取り入れる場合は、これらの特性や課題を理解し、適切に活用することが重要です。

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