リアルとデジタルの融合で変わる顧客体験について解説 !

 2023.01.31  2024.03.22

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著者プロフィール

池岡 敦美伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
新事業創出・DX推進グループ DX企画推進部
企画統括・マーコム課 池岡 敦美


SIer企業にて、企業広告や商品広告の制作担当を経て、社外広報業務に従事。
2021年伊藤忠テクノソリューションズへ中途入社し、現在は新事業創出・DX推進グループにて
ブランディング推進やDX関連サービスのプロモーションに携わる。
デジタル化を推進すべき”23の領域” とは?

➀顧客体験(CX)とは

「顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)」という言葉はいまや目にする機会が多くなって久しいですが、Customer(顧客)と Experience(体験)を組み合わせた用語であり、顧客が商品やサービスに興味を持った段階から、購入、利用といった消費行動全般に伴う一連の体験を指します。関心や興味、購入、利用といった企業との接点ひとつひとつを顧客接点と呼びますが、顧客体験は顧客接点の集合体とも言えます。
 例えば、TVで気になる商品のCMを見かけた際に、スマートフォンで検索をして商品ページや口コミを閲覧し、実際にECサイトで商品を購入したという経験はありませんか?このようにTVCMの認知から始まり、商品を購入し、実際に利用するまでのすべての行動を顧客体験と呼びます。

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②コロナ禍を経て消費行動はどのように変化したのか

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、私たちの生活スタイルは大きく変化しました。その中でも最も顕著だったのが、「非対面コミュニケーション」が定着したことではないでしょうか。テレワークやオンライン授業が当たり前となり、ライブやイベントなどのオンライン化が進みました。そして、消費の場もリアルからデジタルへと移り変わっています。3密回避や外出自粛要請に対する対応策として、ECサイトの利用が爆発的に増え、オンラインツールを利用した接客やコミュニケーションなど、新たな顧客との接点も生まれました。
株式会社電通デジタルが、昨年12月に発表した「リテールDX調査(2021年版)」によると、新型コロナウイルスの影響を受け、リアル店舗への来店頻度が下がったと回答した約6割の生活者はコロナ収束後も来店頻度は戻らないと回答しており、今後も消費者のデジタルシフトはまだまだ進んでいくものとみられます。
しかしながら、コロナが収束したら来店頻度は元に戻ると答えた残りの約4割は、主な理由として「店の世界観、雰囲気を楽しみたい」、「店舗でしか売っていない(食べられない)ものがある」、「新しい商品との出会いを期待している」といった回答を挙げており、リアルの場でしか味わうことができない「体験価値」を求めている生活者が一定層いるということが分かります。
このことから、アフターコロナマーケットにおいては、引き続きデジタルチャネルの充実に注力することも重要ですが、リアルとデジタルのそれぞれの強みを上手く融合させて、新しい顧客体験を創出していくことも重要になってくるのではないでしょうか。

出典:電通デジタル「リテールDX調査(2021年版)」

③リアルとデジタルが融合する顧客体験とは

 では、リアルとデジタルを融合させた顧客体験とはどういうものなのかの一例を解説していきます。
コロナ禍以前から注目されていたキーワードに「OMO」というものがあります。OMOは、「Online Merges with Offline」の略称であり、日本語にすると、オンラインとオフラインの融合を意味します。O2Oやオムニチャネルの発展型とも言われ、ECサイトなどのオンラインとリアル店舗などのオフラインを融合することで、顧客体験を最大化することを目的としています。そのOMO戦略の一環として参入する企業が増えているのが、販売を目的としないショールーム型店舗、通称「売らない店舗」です。
これまではあくまで“販売の場”であったリアル店舗ですが、“体験の場”への変換が図られており、小売の新しい業態としても注目を集めています。ここでは、注目度の高いユニークな事例を3つご紹介します。

髙島屋:Meetz STORE  (https://meetz.store/
 「Meetz STORE」は2022年4月に髙島屋新宿店にオープンした“新たな出会い”がテーマのショールーミングストアです。トレンドに敏感なお客様を中心に商品との新しい出会いを楽しんでいただけるよう、百貨店にあまり品揃えしていない商品を中心に展開しています。新型コロナウイルスの影響などで人々のライフスタイルが変化する中で、生活者の購買行動の変化に対応して、百貨店になじみのない若年層を含めた幅広いお客様との接点を創出し、新しい価値を提供することを目的にオープンされました。
 
大丸松坂屋百貨店:明日見世 (https://dmdepart.jp/asumise/
 「明日見世」は2021年10月に大丸東京店にオープンしたD2Cブランドのショールーミングスペースです。コンセプトは「出会いの循環から新しい可能性を生み出す場」で、オンラインサイトを中心に展開するD2Cブランドのアイテムを手に取ってみることが可能です。3か月ごとにキュレーションテーマとブランドが入れ替わり、百貨店で接客の経験を積んだスタッフを通じて、商品の説明やブランドのストーリーを知ることもできます。

そごう・西武:CHOOSEBASE SHIBUYA (https://choosebase.jp/
 「CHOOSEBASE SHIBUYA」は2021年9月に西武渋谷店にオープンした「未来の小売空間」を体現できるメディア型OMO店舗です。スマートフォンが商品説明など販売員の役割を一部担うほか、購入したいアイテムのQRコードを読み込み専用サイトやアプリのショッピングカートに登録することで買い物かごを持ち運ぶことなく店内を回遊、お買い物ができる仕組みが開発されています。ファッションからコスメ、雑貨、食品までデジタルに強いD2Cブランドを中心に誘致し、20代〜30代の若者をメインターゲットに新たなショッピング体験を提供しています。

 その他にも、2015年にシリコンバレーで誕生し、2020年8月に新宿と有楽町に2店舗がオープンした「b8ta」をはじめ、マルイや蔦屋家電、オルビスなど多くの企業で「売らない店舗」の展開が広がっています。

そして、本章で紹介した事例を改めて振り返ってみると、「出会い」というキーワードが共通して挙げられていることが分かります。ここで少し筆者自身の話をすると、ご多分に漏れず日用品や衣服など身の回りのものはオンラインで購入するようになった私ですが、「本」だけはリアル店舗で購入することにこだわっています。それは、書店をぶらぶら歩きながら、本の帯や店員さんが作成したPOPを見て「面白そうだな」と惹かれた一冊を手に取って読んでみるということが好きで、まさに「新たな本との出会い」を求めてリアル店舗に足を運んでいます。本を例にとってみても、いまやオンライン上で試し読みまでできる時代なので、書店に足を運ぶ必要はないと思う方は多いと思いますが、世の中にあふれる膨大な書籍の中から、自分が手に取ったことのないようなジャンルの本と“偶然”出会うことができるのは、やはりリアル店舗でしか体験できないことではないかと筆者自身強く感じています。
デジタル化の波や人手不足といった問題に押されて、多くの業種でリアル店舗における省人化、業務効率化が進められています。しかし、リアル店舗における最初の出会い=顧客体験をどれだけ満足度の高いものにできるかが、デジタルへ誘導し、その後長く顧客を囲い込む最初のステップとして非常に重要であるという認識に立つこともアフターコロナ時代を勝ち抜くカギであると言えるのではないでしょうか。

④まとめ

新型コロナウイルスによって生活スタイルが一変した消費者に対して、従来と同じやり方で商品やサービスを提供していては、お客さまのニーズに応えきれない時代になっています。本記事で解説したリアルとデジタルの融合、OMO戦略をぜひ自社のCX向上に向けた施策に取り入れてみてください。 
また、OMOの最大のメリットは、オンラインとオフラインの両方から顧客行動データを取得し、一元管理できる点にあります。従来はリアル店舗でのデータ取得というと、POSからの購買情報が主でしたが、いまやAIカメラやセンサーなどを活用することで、どの商品を見ていたか、手に取ったかというリアル店舗での顧客行動もデータとして取得することができるようになっています。
得られる顧客行動データを分析、活用していくことで、真のニーズを探ることもでき、顧客体験のさらなるアップグレードにつなげていくことも期待できます。
OMO戦略を取り入れる際はデータの収集、蓄積、加工、可視化、分析を一元的に行えるデータ利活用基盤の整備にもセットで取り組むとよいでしょう。
CTCでは、データ利活用基盤の整備を一気通貫でご支援するサービスを提供しております。詳細はこちらからご覧ください。

※部署名、役職名、その他データは公開当時のものです。

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