CTCのコンテナ基盤サービス「C-Native」が
Red Hat OpenShiftでコンテナを提供する理由とは
~Red Hat OpenShiftで実現するクラウドネイティブの優位性と将来性~
【前編】

 2023.01.31  2024.05.30

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企業の重要な情報資産を守り、経営に貢献するITとして、エンタープライズIT基盤は、これまでオンプレミスの「ハイパーバイザー型仮想化」基盤が中心となっていました。その一方で、技術革新への追随やタイムリーな開発、柔軟性や保守性に優れたアプリのために、クラウドネイティブで利用されているマイクロサービスという疎結合なアーキテクチャの採用が加速しています。マイクロサービスを採用すると、アプリの修正や追加が容易になり、レガシーシステムの課題だった「塩漬け」の懸念が払拭されます。そこで注目されているのが、「コンテナ型仮想化」基盤です。クラウド環境を積極的に利用するクラウドネイティブなアプリ開発において「コンテナ」による実行基盤の構築は、必須のテーマとなっています。その「コンテナ」導入における国内市場の動向や先進的な取り組みについて、CTCとRed Hatのスペシャリストが対談しました。

登壇者プロフィール

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 小野 友和伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 エンタープライズビジネス企画室 デジタルビジネス推進第1部 部長代行 小野 友和

2001年 伊藤忠テクノサイエンス入社(現 伊藤忠テクノソリューションズ)。
数々の技術主管・商品企画部署を経て、2012年にサーバ・ストレージなどのインフラ関連製品の技術責任者に就任。2018年にはコンテナ技術を用いたAI分析基盤ソリューションなど、クラウドネイティブ関連の技術主管とビジネス企画など実施。
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 一万田 真久伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 マネージドサービス企画・推進事業部 クラウドネイティブ推進部 部長代行 一万田 真久

大手金融機関を中心に、プライベート・パブリッククラウドシステムの導入プロジェクトに数多く参画。その中でKubernetesやOpenShiftを活用したシステム導入をリード。
2020年10月より、お客様へのシステム導入・運用実績を踏まえた、クラウドネイティブ支援サービス 「C-Native」の立上げと提供を開始。現在は、C-Nativeサービスの企画、推進/展開に従事。
[主な講演]
・HashiCorp Virtual Strategy Day Japan Vol.2 (2022.4)
・Red Hat Summit Connect 2022 Japan (2022.10)
レッドハット株式会社 遠藤 孝一レッドハット株式会社 パートナーソリューションアーキテクト部 シニアソリューションアーキテクト 遠藤 孝一

インフラエンジニア、プロジェクトマネージャ、情報システム部マネージャなどに従事する。その経歴の中でコンテナ技術に出会い、その可能性に大いに感銘を受け、とうとうRed Hatに来てしまう。Red Hatではパートナー様向けのソリューションアーキテクトを担当し、コンテナの素晴らしい世界を広げるべく活動中。モットーは「仕事は楽しく」。
顧客体験価値向上DX「ストリーミングエンジンによるデジタルサービスプラットフォーム」 ー全日本空輸株式会社 様ー

コンテナマーケットの現状「二極化が加速する日本のエンタープライズ市場」

小野氏
クラウドネイティブによるアプリ開発において、コンテナの利活用が進んでいると思います。Red Hatの遠藤さんから見て、日本国内のクラウドネイティブとコンテナ導入の状況は、どのように分析していますか。

遠藤氏
2016年ごろからコンテナが注目されはじめて、日本でも金融や通信業界を中心に積極的な導入が進んできたと思います。現在は、製造業での導入事例も数多くあり、満遍なく業界にコンテナが浸透していると受け止めています。

小野氏
確かに、国内でも情報技術者の試験問題に「コンテナ型仮想化」に関連する出題があり、検索ワードとして急上昇した、という話も聞きます。DXの推進においても、クラウドネイティブを採用する流れの中で、コンテナを使おうと検討するケースは、増えているのでしょうか。

遠藤氏
クラウドネイティブで開発のスピードを速くし、柔軟性や保守性に優れたアプリのために、コンテナを採用するケースは、これまではB to Cが多かったのですが、最近ではB to Bでの導入も進んでいます。

一万田氏
ある調査レポートによれば、2016年から2021年までは右肩上がりでコンテナの導入や検討が増加してきました。ただ、2022年に入ってからは横ばいになっています。この変化は、コンテナ市場が成熟してきたのではなく、二極化が進んできているのだと分析しています。

小野氏
二極化とは、どういう意味でしょうか。

一万田氏
一方は、クラウドネイティブとコンテナを採用して、ビジネスの成果を達成している企業です。もう一方は、腰が重い情報システムです。

遠藤氏
我々のお客様でも、Red Hat OpenShiftをばんばん使い倒している開発チームと、そもそもコンテナって何で必要なの?というところで迷われているケースがあります。しかし、重要なのはコンテナを使うのがゴールではなく、B to BでもB to Cでも、開発するアプリの柔軟性を達成できるかどうかです。

コンテナ技術を活用したWebシステム基盤刷新事例 ー日本コープ共済生活協同組合連合会様ー
デジタル化を推進すべき”23の領域” とは?

先進的なクラウドネイティブ企業の構築事例

小野氏
すでに国内の企業で、クラウドネイティブとコンテナを採用して、ビジネスの成果を達成している企業には、どのような事例があるのでしょうか。

遠藤氏
金融サービスの分野では、日本コープ共済生活協同組合連合会様(以下、コープ共済連)の事例があります。コープ共済連様では、コープ共済の契約者向けWebシステム「共済マイページ」のWebシステム基盤として、Red Hat OpenShiftを採用されました。その理由は、開発の柔軟性です。コープ共済連様では、アプリケーションごとに実行環境を分けられ、マルチベンダーの開発体制と親和性が高く、短期間・低コストでのデリバリーや、リソースの柔軟な増減なども可能であることから、コンテナを採用されました。

小野氏
アプリ開発の柔軟性を重視された背景は、どこにあったのでしょうか。

遠藤氏
「共済マイページ」は、契約者の共済金請求や住所変更などの手続きを24時間365日可能なサービスです。利用者の多種多様なニーズに素早く柔軟に応えるために、サービス機能単位にアプリを構築し、アプリごとに異なるベンダーに開発を依頼するマルチベンダー体制を採っていました。そのため、設定や構成などの環境を細かく変える必要があり、開発効率を上げるには従来システムでは限界がありました。加えて、突発的なアクセス増に対応するためのコストも問題となっていました。そこでコンテナを採用し、外部の開発スタッフは、コープ様の開発室などに常駐することなく柔軟な体制で開発する、マルチベンダー体制でのアプリケーション開発が行われました。

小野氏
マルチベンダー体制でのアプリケーション開発というのは、一般的になっているのでしょうか。

遠藤氏
開発ベンダーごとに設定や構成など環境を細かく変える必要があるため、従来のモノリシック開発基盤ではマルチベンダー体制でのアプリケーション開発には限界がありました。
コンテナコンテナならアプリケーションごとに実行環境を分けられるため、マルチベンダーの開発体制と親和性が高くなるという特徴があります。

小野氏
パブリッククラウドではコンテナ基盤としてManaged Kubernetesが提供されていますが、なぜコープ共済連様はRed Hat OpenShiftを選ばれたのでしょうか。

遠藤氏
お客様に提供するサービスでは、24時間365日の安定した運用と保守が必須となります。そのため、Managed Kubernetesにしてしまうと、保守範囲が限定的で障害時の切り分けなどの責務も発生します。それに対して、Red Hat OpenShiftであれば、運用保守の労力がオフロードされるので、結果的にエンジニアの負担や教育コストの低減につながると考えられたようです。

クラウドネイティブの必要性「レガシーからのモダナイズを加速するクラウドネイティブ」

小野氏
B to Cのサービス提供において、Red Hat OpenShiftによるコンテナ基盤が、とても効果的だとわかりました。その一方で、エンタープライズにおけるB to Bでのコンテナ導入は、どのようになっているでしょうか。

遠藤氏
SAP S/4HANA ベースの基幹システムと周辺システムの連携基盤に、Red Hat OpenShiftと Red Hat Integration を導入された製造業A社様の事例があります。新規のERP システムを構築した製造業A社様では、事業部や工場などの現場で稼働しているシステムとの連携が課題となっていました。基幹システムを刷新しても、営業や会計などのシステムをモダナイズしていくために、マイルドに全体的な統合を果たすための「橋渡し役」が求められていました。そこで、Red Hat Integration による「橋渡し」と、レガシーなシステムをモダナイズしていくためにRed Hat OpenShiftによるコンテナ基盤が採用されました。モジュール化されたマイクロサービスへの移行により、開発と本番の両方の環境へのデプロイ時間が短縮され、CI/CD(継続的インテグレーションと継続的デリバリー)の強化で、より容易に各 API の構成の最適化が行えるようになりました。

小野氏
クラウドネイティブの導入というと、新しいアプリ開発のために採用すると思われがちですが、製造業A社様の事例では、既存のシステムにコンテナを組み合わせることで、レガシーからの段階的なモダナイズを可能にされたのですね。

遠藤氏
B to Bでのコンテナ活用では、バッチ処理が基本の基幹システムが稼働していても、コンテナ側のアプリでその更新データを検知して、リアルタイムな在庫情報が参照できるようなシステムも開発できます。

小野氏
なるほど、クラウドネイティブへのシフトにおけるコンテナの導入では、より適切なコストでアプリ開発を素早くし、運用を最適にできる環境も整備して、そこからデジタルビジネスの価値を生み出せるかが、真のゴールとなるわけですね。
後半では、クラウドネイティブを導入するエンタープライズが、どのような成果を期待しているのか、CTCのC-Nativeの事例も含めて、紹介していきたいと思います。

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