個人情報が漏洩すると、組織にはどのような影響があるのでしょうか。本記事では、個人情報漏洩の原因をはじめ、漏洩によって個人・企業が受ける影響、代表的な漏洩事例、漏洩した際の対処方法、漏洩を防ぐための方法について解説します。自社の個人情報漏洩対策に悩んでいる担当の方は必見です。
個人情報漏洩の主な原因
個人情報の漏洩の原因は、多面的に考えることが重要です。ここでは代表的な漏洩原因について解説します。
ウイルス感染
近年、個人情報漏洩の原因として多いのが、ウイルス感染です。外部から不正アクセスが行われ、個人情報が漏洩します。とくにマルウェアの巧妙化によって被害は年々増えており、全社的にセキュリティ対策の強化を行わなければなりません。
独立行政法人 情報処理推進機構が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2023」によると、2022年に組織で発生した大きな脅威の第1位は「ランサムウェアによる被害」です。ランサムウェアとはマルウェアの一種で、ファイルを利用不可にした上で、復旧と引き換えに金銭を要求してきます。
参照元:独立行政法人 情報処理推進機構「情報セキュリティ10大脅威 2023」
また、トレンドとしてAIを悪用したサイバー攻撃にも注意が必要です。例えば、システムの脆弱性を感知するAI技術が悪用されたり、AIがウイルスメールを自動送信したりする事例が増えています。
従業員の誤操作
ヒューマンエラーも代表的な漏洩原因の1つです。株式会社 東京商工リサーチによると、2022年に上場企業とその子会社で発生した個人情報の漏洩・紛失事故は165件あり、そのうち「誤表示・誤送信」が原因である事故は43件と約26%を占めています。従業員がメールの誤送信やシステムの設定でミスをしてしまうケースが多いようです。
参照元:株式会社 東京商工リサーチ
端末の管理不足
重要情報が入ったパソコンやUSBなどを誤って紛失・廃棄してしまうケースも目立ちます。この状況が広がったのは、コロナ禍によるテレワークの推進があります。社外にデータを持ち出しやすくなったことで、デバイスの置き忘れや移動時のデータ紛失などが増加しています。
個人情報漏洩するとどうなる? 個人・企業が受ける影響
もしも個人情報が漏洩すると、いったいどのような影響があるのでしょうか。ここでは個人と企業が受ける影響をそれぞれ取り上げます。
個人が個人情報漏洩で受ける影響
個人が受ける主な影響は、以下のとおりです。
- クレジットカード情報の流出
- ログインID・パスワードの流出
- 連絡先の流出
クレジットカード情報が流出すると、第三者にカード情報や連絡先などを不正利用される可能性があります。また、WebサイトのログインIDやパスワードが漏洩すると、そのアカウントに紐づけられた氏名、住所、電話番号などが芋づる式に流出します。そして、それらの個人情報は名簿屋などを通して、悪徳業者に転売されることが多く、結果的に架空請求などの詐欺被害や業者からの勧誘にだまされるなどのリスクが高まります。
企業が個人情報漏洩で受ける影響
企業が受ける主な影響は、以下のとおりです。
- 顧客データの漏洩
- 社会的信用の失墜
- 独自技術やノウハウの漏洩
企業の場合、社会的信用が失われ、大きな損失につながります。また、顧客データが外部に流出することで被害者ではなく、加害者になる可能性があります。場合によっては、個人情報保護法に違反するため罰金を支払わなければならず、民事上でも損害賠償責任が発生します。さらに、これまでの独自技術なども一緒に漏洩してしまうと、従来のビジネスが実施できなくなることもあります。
個人情報漏洩3つの事例
個人情報の漏洩によって、大きな問題を起こした企業は数多く存在します。
事例1. 大手商社
ある大手商社Aは、運営するオンラインショップ利用者のクレジットカード情報を数千件漏洩させました。原因はシステムの脆弱性によって決済アプリが改ざんされたためと指摘されています。
問題発覚後、漏洩の危険性がある利用者に連絡を取り、情報セキュリティ対策や監視体制の強化など再発防止に努めました。
事例2. 大手IT企業
大手IT企業Bは、運営しているアプリの不正アクセスによって利用者の氏名や住所、電話番号、購入履歴情報など、270万件以上の顧客情報が漏洩した可能性があると発表しました。
これを受けて個別の案内以外に専用窓口を設置し、また、外部セキュリティ専門家による脆弱性診断など情報セキュリティの強化を行い、顧客の信頼回復に努めました。
事例3. 大手自動車生産・販売会社
大手自動車生産・販売会社Cならびに関連会社Dは提供するサービス契約者の個人情報(メールアドレスと顧客管理番号)が、約30万件漏洩した可能性があると公表しました。専門家による調査では不正利用は確認されませんでしたが、漏洩の危険性がある利用者には連絡を取り、専用フォームや専用コールセンターを設置しました。
個人情報が漏洩した時の対処
もし個人情報が漏洩した場合、基本的には以下の手順で対応を行います。
- 発見・報告
個人情報の漏洩を発見したら、速やかに責任者に報告し、問題対処ができる体制を構築します。場合によっては、この時点で弁護士に対処などを相談します。
またこの時、不正アクセスの証拠などを誤って削除しないように不必要な操作は控えます。 - 調査
事実関係の調査を行います。情報漏洩が発生した原因や被害の規模などを調べ、情報をまとめます。 - 通知・公表
調査結果を被害者に公表します。被害規模が大きく、全ての利用者に個別の通知ができない場合には、マスコミ関係者を通じてメディアで情報を伝達します。不正アクセスや盗難、脅迫などが発生した場合には、警察にも連絡を行います。 - 復旧措置
個人情報の漏洩によって停止していたシステムやサービスを復旧します。 - 再発防止
再発防止策を検討します。被害者への必要な措置や、責任者の処分もここで検討しましょう。
被害を最小限に食い止めるには、日頃からリスクマネジメントに取り組まなければなりません。
リスクマネジメントについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
リスクマネジメントとは簡単にどのようなこと?重要性や手順なども解説
個人情報漏洩を未然に防ぐ3つの対策
個人情報漏洩を防ぐためには、前もって対策を講じることが大切です。現在主流となっている主な対策を紹介します。
システムのアクセス権に制限をかける
従業員の誰もがアクセスできるのは危険です。そこで、IDやパスワードを知っている人間のみが情報に触れられる環境を構築するために、利用するシステムにアクセス制限をかけます。これにより、従業員が個人情報を持ち出す内部犯罪のリスクが減らせます。
ただし、アクセスの制限内容が外部に漏れてしまっては意味がありません。IDやパスワードの情報を、社内で適切に管理することが重要です。
パスワードの正しい管理方法は、以下の記事をご覧ください。
企業における適切なパスワード管理とは?現状や重要性、必要な機能を解説
セキュリティソフトを導入する
セキュリティソフトの導入は、外部からの不正アクセスや、ウイルスの侵入を防ぎます。マルウェアの察知や駆除以外にもフィッシング対策や迷惑メールのブロックなど様々な機能があるため、自社に合ったものを選びます。とくに、IDSやIPSなどのシステムを利用すれば、不正アクセスを素早く遮断することが可能です。
社内で個人情報漏洩のリスクを周知する
社内で個人情報漏洩の知識を共有することも欠かせません。個人情報を流出させることで刑事罰に問われるなど、リスクを理解してもらい、従業員のITリテラシーを高めます。また、故意的な持ち出しや紛失・盗難を防ぐために、デバイスやUSBなどの管理の徹底に全社を挙げて取り組むことが大切です。
まとめ
企業で個人情報が漏洩してしまうと、社会的信用が落ちたり、損害賠償が発生したりするなど様々な影響があります。問題なく事業を進めるためにも、システムのアクセス権に制限をかける、セキュリティソフトを導入するなどの対策をしっかりと行いましょう。
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