Slackは優れたビジネスチャットツールですが、無料のフリープランではいくつかの使用制限が設けられています。ユーザー数が増大するほど制限の影響が大きくなるため、組織規模の大きな企業は有料プランの導入を検討しなくてはなりません。本記事ではSlackを無料で使う場合の制限や課題について解説します。
Slackを無料で使う場合の4つの制限
Slackは2022年9月1日にプロプランの価格が改定され、それに伴ってフリープランの使用制限にもいくつかの変更が加えられました。Slackはフリープランでも十分な機能を備えていますが、有料プランとの相違点として以下に挙げる4つの制限が設けられています。
1. メッセージ・ファイルの表示制限(過去90日間まで)
フリープランはメッセージとファイルの表示範囲に制限があり、履歴を閲覧できるのは過去90日間までです。
なお、改定前のフリープランは「検索できるメッセージ数は直近1万件」「ストレージ容量5GB」という制限が設けられていました。2022年9月以降は「表示できるメッセージ履歴は過去90日間」「ストレージ容量無制限」に変更され、ストレージ上限の撤廃によってファイルの管理は以前より容易になっています。
2. 膨大なメッセージ・ファイルの送信制限
Slackが1度にアップロードできるファイルのサイズ上限は、フリープランと有料プランのどちらも1ファイルあたり1GBです。1GB以下のサイズであればファイルの種類に制限はありません。
ただしサービスの健全性やリソース配分の最適化を図るために、フリープランでは特定の行動に対する制限があります。例えばスパム対策の一環として、短期間における大容量のメッセージ・ファイルの送信は阻止される可能性がある点に注意が必要です。
3. メッセージ・ファイルの保存制限
フリープランと有料プランの違いはメッセージ・ファイルの保存設定です。フリープランは「全てのファイルを保存する」と「全てのファイルを90日間保存する」という2つの選択肢が用意されています。ワークスペース上に全ての共有データが保存されますが、原則として削除されたメッセージ・ファイルは復元できません。
有料プランの場合は編集・削除されたものを含む全てのメッセージ・ファイルを保存できます。これらの設定は、Slack canvasについても同様です。
4. 追加できるアプリのインストール制限
Slackは利便性の強化や情報共有の効率化などを目的として、サードパーティ製のアプリケーションやカスタムアプリを追加できます。
有料プランは連携できるアプリの数に制限はありませんが、フリープランでは最大10個までの制限が設けられています。そのため、上限に達した場合は不要なアプリをアンインストールするといった調整が必要です。
Slackを無料プランで使う場合の3つの課題
フリープランにおける4つの制限を考慮すると、業務での利用においては以下に挙げる3つの要素が課題となります。
過去のメッセージが遡れず仕事に支障が出る
チャットツールの使用時には、過去のメッセージを参照する必要がある状況は少なくありません。例えば履歴を遡って案件の担当者を確認する、あるいはプロジェクトの方向性を理解するために過去のやり取りを参照するといった場合です。
フリープランは過去90日間の表示制限があるため、情報共有や合意の確認などに支障が生じる可能性があり、業務での利用には向きません。
アプリの連携にも制限があり、効率化に限界がある
Slackの特筆すべきポイントの1つは他のアプリとの連携性です。例えばGoogle WorkspaceやMicrosoft 365などと連携することで、社内・社外におけるコラボレーションの活性化が期待できます。しかし最大10個の連携制限が設けられているフリープランでは、アプリの利用による効率化に限界があります。
ワークスペースを1つしか持てない
Slackはワークスペースにチャンネルを作成し、そのグループ内でコミュニケーションを取るのが基本的な運用方法です。組織規模の大きな企業の場合、1つのワークスペースでは情報管理の煩雑化やセキュリティ上の課題が生じます。複数のワークスペースを運用したい場合は、最上位プランのEnterprise Gridを選択する必要があります。
フリープランと有料プランとの主な違い
Slackのプランはフリー・プロ・ビジネスプラス・Enterprise Gridの4つが用意されています。それぞれメッセージ・ファイルの表示範囲や連携できるアプリの上限などが異なります。フリープランと有料プランの主な相違点は以下のとおりです。
フリー | プロ | ビジネスプラス | Enterprise Grid | |
定価(1ユーザー / 月) | ¥0 | ¥1,050 | ¥1,800 | 要問い合わせ |
ファイルの保存 | 直近90日まで閲覧可能 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
メッセージの表示・検索の上限 | 直近90日まで閲覧可能 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
外部アプリ連携数の上限 | 10 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
ワークフロービルダー | - | ✓ | ✓ | ✓ |
Slack ハドルミーティング | 1対1のみ | ✓ | ✓ | ✓ |
Slack canvas | チャンネルと DM のみ | ✓ | ✓ | ✓ |
音声と動画のクリップ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ |
シングルサインオン(SSO) 認証(SAMLベース) | - | - | ✓ | ✓ |
2要素認証 | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ |
Slack コネクト | Enterprise Gridからの招待で利用可能 | ✓ | ✓ | ✓ |
ワークスペース数 | 1 | 1 | 1 | 無制限 |
同一環境内のワークスペース間連携チャンネル | - | - | - | ✓ |
メッセージのデータエクスポート | パブリックチャンネルのみ | パブリックチャンネルのみ | 全メッセージ | 全メッセージ |
データ損失防止(DLP)・電子証拠開示(e-Discovery)などのAPI統合 | - | - | - | ✓ |
監査ログ | - | - | - | ✓ |
エンタープライズモビリティ管理(EMM)の統合 | - | - | - | ✓ |
ドメインクレーム | - | - | - | ✓ |
サービス品質保証 | ベストエフォート | ベストエフォート | 99.99%稼働 | 99.99%稼働 |
おすすめのプラン | - 個人や学生、小規模なチーム向け。 - 基本的なチャットとファイル共有が必要な場合。 - 予算が限られており、コストをかけたくない場合。 |
- 中規模のビジネスやプロジェクトチーム向け。 - 高度な機能やカスタマイズが必要な場合。 - チームが成長しており、拡張性が必要な場合。 |
- 大規模な組織向け。 - より高度なセキュリティ機能やコラボレーション機能が必要な場合。 - ビジネスコミュニケーションを効率化したい場合。 |
- 大規模な企業や複数の部門を統合したい場合。 - 高度なセキュリティ、統合、管理機能が不可欠な場合。 - ユーザーやデータの管理と統合が必要な場合。 |
参照元:https://app.slack.com/plans/T03A490PBFU?geocode=ja-jp
メッセージやファイルを無制限で表示したいなら:プロ
プロ以上の有料プランでは過去のメッセージや添付ファイルを無制限に閲覧できるため、情報検索の制約を受けず履歴の消失を防止できます。また、フリープランではハドルミーティングが1対1のみとなっていますが、有料プランでは最大50人まで参加可能です。さらに有料プランでは独立したcanvasの利用が可能になると共に、外部アプリとの連携制限が無制限になり、業務効率の大幅な向上が期待できます。ただし高度なセキュリティ要件やコンプライアンスに対応できる機能を求める場合は、ビジネスプラス以上のプランが必要です。
より高いセキュリティを求めるなら:ビジネスプラス
大規模な組織でビジネスチャットを運用する場合、厳格なセキュリティ要件を満たさなくてはなりません。ビジネスプラス以上のプランはSAML(Security Assertion Markup Language)をベースとするシングルサインオン(SSO)が搭載されており、セキュリティとコンプライアンスを強化しつつ、パスワード管理の煩雑化を軽減できます。
こういった高度なセキュリティは強みではあるものの、コミュニケーションの部分では懸念点が残ります。ビジネスプラスプランでも利用できるワークスペースの数は1つのみです。拠点やプロジェクトを数多く抱える大企業で、全てのやり取りを1つのスペースで進めるのは、社内コラボレーションの阻害やセキュリティリスクの増大を招く要因となりかねません。
ワークスペースを複数持てる:Enterprise Grid
Enterprise Gridプランは複数のワークスペースを無制限に利用できます。例えば部門やプロジェクトごとにワークスペースを作成し、それぞれに異なるセキュリティポリシーやアクセス権限を設定するといった利用が可能です。
データ損失防止(DLP)のAPI統合や監査ログ、エンタープライズモビリティ管理(EMM)などの高度なセキュリティ機能が搭載されているため、組織規模の大きな企業ではEnterprise Gridの導入が推奨されます。
普段、メールを主な連絡手段としている企業も少なくありませんが、昨今ではリスクの大きい手段とも言えます。
メールだと送信ミスをした際にメールの削除は難しかったり、ファイルを添付すると送信した人数分複製ができてしまったりします。
一方でSlackなどチャットツールであれば、誤った文章は削除、編集ができますし、ファイルもワークスペースに1つとなるので複製されません。特にEnterprise Gridであればセキュリティ機能なども充実していますので、あらゆるリスクに備えられます。
Slackの無料使用に関するよくあるQ&A
ここではSlackのフリープランについてよくある質問を紹介します。
90日が経過したメッセージやファイルはどうなる?
90日が経過したメッセージやファイル、クリップなどは全て非表示となります。過去のメッセージ履歴や添付ファイルなどを参照したい場合は、プロプラン以上へのアップグレードが必要です。ただし削除したメッセージやファイルはアップデートしても復元はできません。
1人だけ有料プランにアップグレードすることはできる?
Slackの有料プランはワークスペースを対象として適用されます。そのため、基本的に1人のユーザーだけが有料プランにアップグレードすることはできません。有料プランへの移行を希望する場合、ワークスペースそのもののアップグレードが必要です。
有料プランを無料で試すことはできる?
Slackのプロプランとビジネスプラスプランには無料トライアルが用意されています。無料トライアルの利用中は有料プランへアップグレードしない限り料金の請求はありません。ただし無料トライアルの終了後は自動的にフリープランに戻り、使用制限が再適用される点に注意が必要です。
参加人数への制限はある?
Slackは、フリープラン・有料プランどちらもチャンネルの作成数や招待できる人数に制限がありません。組織の成長にあわせて拡張できる柔軟性がSlackの特長であり、人数の上限を気にすることなくビジネスチャットを運用できます。
導入実績豊富なCTCがSlack導入をサポート
Slackの販売代理店である伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)は、Slack運用を成功させるための、導入支援も可能です。
複数のワークスペースの作成やアプリ導入のサポートが可能
Enterprise Gridプランは複数のワークスペースを作成できると共に、数千人以上のユーザーをサポートできます。その性能を最大限に引き出すためには、外部アプリとの連携や運用体制の整備が必要です。とくに組織規模の大きな企業ほど、AsanaやJiraなどのタスク管理ツールと連携してプロジェクト管理の効率化を図る、あるいはBoxやGoogle ドライブなどのクラウドストレージと連携してセキュアな情報共有基盤を構築するといった施策が欠かせません。CTCの導入支援サービスではこうした連携の提案を行っており、導入時に自社で細かな利用方法を検討する手間を削減できます。
自社での導入は難しいEnterprise Grid:全社採用のCTCがサポート
複数の部門で構成されている大企業や海外拠点をもつ組織、あるいは多国籍企業などでSlackを導入する場合、セキュリティやコンプライアンスの観点からEnterprise Gridプランが推奨されます。しかし、Enterprise Gridは大規模で複雑な組織向けのプランであり、計画的なワークスペースの設計やITリソースの管理、セキュリティポリシーの策定などに高度な知見が必要であることから、自社のみでの導入は難しいかもしれません。
そこで、Enterprise Gridを全社採用しているCTCであれば、同プランの導入から運用に至る一連のフローを総合的にサポートできます。
まとめ
Slackのフリープランでは表示できるメッセージ履歴が過去90日間に制限されるため、業務目的での利用は現実的ではありません。また、有料プランであってもEnterprise Grid以外は作成できるワークスペースが1つに限られます。複数の拠点や異なるプロジェクトを抱える組織でワークスペースを共有することになれば、セキュリティポリシーやアクセス権限の適用などに関する課題が発生します。そのため、大規模な企業でSlackを導入する際には、Enterprise Gridプランがおすすめです。
Slackの戦略的活用とEnterprise Gridプランの導入を検討している方は、CTCの導入支援サービスを利用してください。
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