スマートファクトリーとは? メリットや導入時の課題を徹底解説

 2022.07.26  2022.07.28

工場のデジタル化によって生産性の工場を図る「スマートファクトリー」は、導入によって多くのメリットをもたらします。一方で、導入には適正な手順を踏む必要があり、またいくつかの課題もあります。この記事では、スマートファクトリーのメリットから導入方法、課題に至るまでを詳しく解説します。

スマートファクトリーとは

「スマートファクトリー」とは、IoT(Internet of Things)やAIを導入することで、業務プロセスの改善や設備の最適化、生産性の向上を継続的に行う工場のことを指します。IoT技術によって業務・設備のデータをリアルタイムに収集できるため、データを活用した業務の見える化や自動化の実現が可能です。
収集したデータに基づいて効率的に行われる業務により、工場内の無駄をなくしてコスト削減や生産性の向上につなげられます。

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スマートファクトリーが広がった背景

スマートファクトリーの取り組みが広がった背景には、ドイツ政府の進める「インダストリー4.0(第4次産業革命)」の存在があります。「インダストリー4.0」は「第4次産業革命」を指し、ドイツが国を挙げて進めていたプロジェクトに由来します。また、経済産業省が発表した「スマートファクトリーロードマップ」により、製造現場でのデジタル化が推奨されていることも要因として挙げられます。

基盤であるインダストリー4.0

「インダストリー4.0」は、製品の開発から生産、保守まで全てのプロセスを標準化し、一部のプロセスを異なる企業と補完・共有できる状態にする取り組みです。ドイツでは、開発部門だけでなく生産部門も国内に残すために、この取り組みを推進しています。
このような取り組みが実現した場合、企業が単体で全てのプロセスを行わなければならないといった制限はなくなります。そのため、企業の得意分野や稼働状況などによって他社に業務を依頼することができ、国内の企業同士が連携を取りながらリソースを効率よく使って業務を行うことが可能です。
スマートファクトリーの基盤となっているのが、こういった「インダストリー4.0」のコンセプトです。スマートファクトリーにおいては、工場内の稼働状況などに応じて部門同士が業務を補完し効率的にプロセスを実行するため、コスト削減や生産性の向上が期待できます。

経済産業省のスマートファクトリーロードマップ

スマートファクトリー化の広がりには、経済産業省が2017年に公表した「スマートファクトリーロードマップ」も関係があります。このロードマップにおいて、デジタル化の進展やIT技術の革新など外部環境の変化を受け、IT技術・データを活用して20〜30年後のものづくりの未来に向けた7つの戦略課題への対応が必要であることが示されています。
参照元:「 スマートファクトリーロードマップ〜第4次産業⾰命に対応したものづくりの実現に向けて〜

7つの戦略課題とは、2016年に発表された「2040年のものづくりの未来の姿」で挙げられた戦略課題のことで、「1.社会のデジタル化・ソフトウェア化に伴う消費の高度化への対応」「2.デジタル技術による擦り合わせ・カイゼンのコモディティ化への対応」「3.生産技術・材料技術のイノベーションの取り込み」「4.製造現場のデジタル化・ソフトウェア化への対応」「5.人材の質・量の不足への対応」「6.資源制約・CO2フリーへの対応と成長市場の取り込み」「7.リスクマネジメントへの対応」を指します。
参照元:2040年のものづくりの未来の姿〜 時流に先んじた戦略⽴案に向けて 〜

スマートファクトリーの導入により、この戦略課題のうち4項目(1、2、4、5)がクリアできるとされています。

スマートファクトリーのメリット

スマートファクトリーの実現は、データの可視化による生産性向上や、最適化によるコスト削減など、多くのメリットをもたらします。

データを見える化し生産性を向上させる

IoTの活用によって工場内の設備、機械装置の稼働状況をリアルタイムに計測し、収集したデータを共有できるようになります。スマートファクトリーでは工場内の各種データが可視化されるため、工程の進捗や作業状況、機器のエラー状況などが即座に把握できます。工場内で非効率的な工程がある場合には、改善が必要な箇所の確認も可能です。
工場内のデータが見える化されることで改善すべき部分が明確になるため、工程や作業などの効率化を実行でき、生産性の向上が期待できます。

作業工程や機械管理などを最適化し、コストを削減する

IoTで取得したリアルタイムの情報を基に、AIがサーバ上で未来の予測図をシミュレートする、「デジタルツイン」と呼ばれる技術があります。このような仕組みを導入することで、コストの最適化が可能になります。バーチャルの工場で事前に機械の故障時期や製品の生産状況を予測し、作業工程や機械管理などの最適化を行います。
工場内では、働く作業員や各種機器が働く環境を整えるための空調管理や、機器を稼働させる電力なども発生します。このようなエネルギーコストも、工場エネルギー管理システムなどを活用することで無駄をなくしてコストの最適化が可能です。

人材不足を解消する

スマートファクトリーでは、ITの活用によって人材不足の解消も期待できます。日本は少子高齢化の影響で生産年齢人口の減少が懸念されています。新型コロナウイルスの感染拡大による海外からの労働者の受け入れも縮小しているため、製造業では人材不足解消が大きな課題となっています。
これまでは人の手で行っていた製品の検品や機械の点検などの作業は、IoTで取得したデータやAIなどを活用することで作業の自動化が図れます。

技術継承の効率化が図れる

工場で働く従業員の技術継承には、スマートファクトリーの導入により収集・蓄積される作業データが役立ちます。機械・設備が収集しているデータからは、従業員の作業習熟度を確認できるため、個人に最適化された指導・教育へとつなげられるのです。
データベース化された作業データを分析することで、熟練技術者の作業方法やノウハウを体系化した効果的なマニュアルを作成できます。マニュアルは全社で共有して技術継承に使用でき、効率よく人材の育成が行えるようになるでしょう。

生産プロセスの短縮化が可能となる

スマートファクトリーでは、設計から量産まであらゆる生産プロセスのデータを蓄積することが可能です。製品の設計をデータベース化することにより、開発・設計の際の事例からプロセスを改善できます。また、一部のプロセスを自動化することで、製品開発の期間を短縮できます。
前述の「デジタルツイン」によって生産ラインをシミュレーションすることも、生産プロセスの短縮化につながります。生産ラインのレイアウトや作業工程、材料などのデータを基に、仮想の生産ライン上でより効率よく生産できるプロセスを調べることで、製品の生産期間を短縮できる生産ラインの設計・構築が可能です。

スマートファクトリー導入手順

実際にスマートファクトリーを導入するにはどのような手順で実施すればいいでしょうか。ここでは、「構築する目的や実施後の目標設定」「小規模からの導入」「運用の実施」の3ステップに分け、順を追って紹介します。

構築する目的や実施後の目標を設定する

スマートファクトリーを導入する際は、最初にその目的や目標を明確にすることが重要です。自社のビジネス戦略や課題から、スマート化によって現状をどのように改善していくかを決定することで、方向性を定めます。目標については、後で評価・検証を行えるよう、具体的な数値の形式を設定します。
導入に向けては、効率よく構築を行うために、スマート化の内容や対象とするプロセスの範囲、コスト、実施規模、レベルなどをよく検討して、明確にしておく必要があります。また、スマート化を行うプロジェクトの責任者や担当者も、構築の初期段階に決定しなければなりません。もしプロジェクトに何か問題や不具合などが発生した場合、責任の所在がはっきりしていないと混乱が生じます。担当者はIT部門などの関連する部門から選出し、経営者の主導でスマート化を推進する体制を構築します。

小規模からシステムを導入する

策定された構築内容に基づいて、IoTツールなどのシステムをトライアルで導入します。構想した目的、目標達成に適したシステムを選定し、いきなりシステムを全体的に大規模に導入するのではなく、リスクを避けるため部分的に導入を始めることがリスクを回避できます。
トライアル導入は、導入効果が出やすくリスクの少ない部分から行い、導入後の実証・評価・改善を繰り返して改善しながら、構築規模を広げていきます。必要なデータを収集・蓄積・データの分析を行った上で、作業の自動化も進めます。従業員が使いやすいシステムの構築や、作業の自動化などにより、徐々に従業員の負担を軽減させることが可能です。

システムを実運用する

最後に、システムの実運用を行います。導入によって得られた効果を数値で記録し、定量的に評価することによって明確にできます。どのような効果が得られたかを組織内で共有することは、従業員のモチベーション維持につながり、運用を早期に定着させることにもつながるでしょう。
運用を開始したら、最初に設定した目的や目標が達成されているのか、業務プロセスやコストの最適化が行われているかなどを定期的に確認し、改善を図ることも大切です。はじめは人の手でデータを基にした最適化を行い、徐々にAIが設備やシステムなどの最適化を行えるように移行します。また、導入したIoTツールを積極的に活用できるように、ものづくりとIoTをよく理解した人材を育成することも将来に向けた必要な施策です。

スマートファクトリー導入時の課題

スマートファクトリー導入時には、「ネットワーク負荷の増加」「ネットワーク構築のハードル」「セキュリティ対策」など、さまざまな課題も残っています。事前に課題を想定した上で対応策を検討する必要があります。

ネットワーク負荷が著しく増加する

スマートファクトリーの運用において、IoTツールが収集する膨大なビッグデータを管理するには十分な容量のネットワークが必要です。ネットワークの容量が不足していると、通信速度が遅くなり、ネットワークを介して活用するツールのパフォーマンスが低下します。高機能のシステムを導入しても、ネットワークが原因で活用できない状態になってしまうと意味がありません。
特に大規模なスマートファクトリーでは、ネットワークの負荷が大きくなりやすいため、対策が必要です。ネットワークの負荷は分散ネットワークの使用で改善できます。その中の「ハイブリッドクラウド」は、物理的なサーバと仮想サーバの両方を活用することでネットワークの負荷を分け、パフォーマンスを維持します。

ネットワーク構築までのハードルが高い

スマートファクトリーの導入におけるネットワークの課題は、容量だけではありません。そもそもネットワークを構築するまでに課題があるのです。
AIやIoTなどのツールを導入する際、古い機器や設備では対応ができません。ツールだけでなく工場の設備まで新しいものに変えなければならないケースが多く、設備やツールなどをそろえてネットワークを構築するにはハードルが高いのが現状です。
また、データをどのように生かすのか、取得するデータやその分析方法はどうするのか、といったことも明確にした上で、目的に合ったネットワークを構築する必要があります。

セキュリティ対策

工場の設備がネットワークに接続されるため、セキュリティ対策も欠かせません。工場はサイバーセキュリティが手薄になりやすい傾向があり、IoT機器に対するサイバー攻撃が増加している近年では、セキュリティに万全な対策が求められるようになりました。
工場を標的にしたサイバー攻撃で稼働停止に追い込まれたり、ランサムウェアの感染によって身代金が要求されたりする被害が発生しています。工場のスマート化にはさまざまなリスクが想定されるため、セキュリティ対策に力を入れる必要があるのです。

デジタル技術に精通した人材の不足

スマート化に必要なデジタル技術を導入するには、デジタル技術の知識を持ち導入プロジェクトをけん引できる人材が必要です。工場の製造技術とスマート化の情報技術、両方に精通した人材は不足しているため、人材の確保は困難を極めます。
自社で人材育成をすることも重要ですが、育成には時間がかかる問題もあります。その場合、外部の専門家などのサポートを受けるなどの対策を取る必要があります。

投資効果の算定が難しい

スマートファクトリーの導入には、設備導入費用だけでなくネットワークシステムやサイバー攻撃対策費など、高額の投資が必要となります。一方で、製造能力の向上やコスト削減などにはすぐに直結しないため、実際に導入した後にその投資効果を算定しづらい問題もあります。
そのため、導入計画を策定する際に、投資によってどれだけの効果が得られるかを事前に把握しておかないと、膨大な費用に対して期待するほどの効果が出ない恐れもあります。

スマートファクトリー成功のポイント

スマートファクトリーを成功させるには、AIやIoTなどのツールを少しずつ導入していくことが重要です。最初から工場全体に導入するのではなく、「スモールスタート」で導入を始めることで、導入の費用を抑えられます。また、導入箇所ごとにツールの検証を行い、個々で最適化を行うことによって、失敗を避けられます。
ITに精通した人材が不足している場合でも、小規模のプロジェクトならベンダーなどのサポートを受けながらの導入が可能です。少ない費用で手軽に始める方法により、スマートファクトリー化が実現するでしょう。

まとめ

スマートファクトリーとは、工場内にIoTやAIを導入して、機器や設備などの稼働データを収集、活用し最適化、継続的に生産活動を行う工場のことです。スマートファクトリーでは、IT技術や各データを活用し、生産ラインの稼働状況からリソースやコストの無駄をなくすための最適化が行われます。データの検証・改善を繰り返す仕組みにより、生産性の向上が期待できます。
導入には多額のコストがかかり、人材などのリソースも必要になるため、十分な計画を策定しなければなりません。スモールスタートで徐々にシステムを構築していくことで、無理なく導入を成功させられるでしょう。

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