BIMとは?3Dモデルとの違いや活用法を解説!

 2021.09.15  2023.06.08

設計の標準的なソフトウェアといえば3D CADが有名です。しかしここ数年で、BIMを利用する企業も増えてきています。そしてBIMを活用した新しいツールも開発されており、これからの建設業界ではBIMも主流となることが期待されています。

そこで本記事では、BIMの導入を考えている方向けに、どんなソリューションなのかを解説していきます。

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今注目を集める「BIM」とは?

「BIM(Building Information Modeling)」は、建築物の3Dモデル、設計図、それに伴った施工のための情報を作成するソリューションです。建築物を3Dモデルから作成することができ、完成したモデルに合わせて平面図が自動で作成されます。

さらに立面図や断面図なども3Dモデルを切るだけで自動生成されるため、それぞれのデータは3Dモデルをベースに統合されているという特徴があります。

また、3Dモデル作成時に使用するパーツは、採寸や施工の方法・時間、材料、材質など、さまざまな情報を入れ込めます。そのため、設計から施工までを含めたモデリング設計が可能です。設計図がわからないクライアントにもそのまま見せることができるので、情報共有が容易になり互いに修正作業が行いやすいというメリットもあります。

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BIMと3D CADの違い

BIMと3D CADの大きな違いは、設計手順でしょう。CADの場合は平面図を作成してから3Dモデルを組み立てていきますが、BIMは3Dモデルを最初に作成していきます。さらにCADでは意匠図をそれぞれ構築しなければいけませんが、BIMでは3Dモデルをベースとして自動作成されるのです。

BIMは意匠図、構造図、設備図がすべて3Dモデルで紐づいているため、不整合によるミスが起こりません。また、修正が発生した時は3Dモデルを変更するだけでいいので、それぞれを書き直すといった作業も発生しません。

BIMの普及率

BIMは海外では広く利用され、特にイギリスと韓国では公共工事の開発でBIMの利用が義務付けられています。一方日本では、BIMの普及は海外よりも少し出遅れていましたが、ここ数年で使用される現場が増えてきたようです。

実際の普及率は、2018年の日建連会員企業元請64社へのアンケートでは、43社がBIMで施工していると答えています。

一方、令和元年9月に行われた中小の設計事務所向けの調査では、導入率は30%となっており大手企業との差が浮き彫りになっています。BIMは便利なソフトである反面、ソフトウェアが高価であるという側面があります。これまで日本の設計ではCADが主流であったため、そのままCADを使用して設計業務を進めているという中小企業も多いのでしょう。

しかし、大規模な設計では使用される頻度が高く、これから技術力もますます向上することから、普及率がさらに上がると思われます。

BIMを利用するメリット

BIMを利用することによって、実際にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは主要なメリットを3つ紹介します。

一括管理・情報共有が容易に

BIMは、3Dモデリングをベースに情報が統合されているため、データの一括管理や情報の共有がとても簡単です。作成したモデルはそのまま情報共有ができるほか、他人が修正しても自動で付随するすべての設計図が書き換わるのでミスが起きにくいのです。図面間の変更漏れやズレは起こりやすいミスなので、この部分が解消されることで業務ストレスの軽減が期待できます。

さらに複数人での作業にも向いていて、作業分担をすれば作業の効率化もできるでしょう。近年ではクラウドとの連携もできるため、遠方にいる仲間との編集作業もできます。デジカメで撮影したデータからサーフェス、ソリッドとデータを変換してBIMデータの作成も可能です。撮影データをすぐに送って、遠方にいる仲間にモデリング作成をしてもらうといった活用方法も考えられます。

設計初期段階から各種シミュレーションが可能

3Dモデリングから意匠図をすぐに作成できるため、設計初期の段階でさまざまなシミュレーションができます。例えば、干渉チェックでは3Dモデリングが重要ですが、BIMであれば初期の段階でわかるため修正が素早く行えます。

設備・構造の3Dモデリングも初期段階でわかるので、イメージを具現化しやすいというのもメリットの一つです。さらに使用したツールの数量はカウントされるため、単価を計算して金額の見積もりを取ることも可能でしょう。

また、既存建築物のモデリングを作成すれば、スケルトン化なども容易に行えます。これを活用すれば改修工事にも活用できます。

設計モデルがわかりやすい

3Dモデルは、誰が見てもわかりやすいという最大のメリットがあります。意匠図は設計に長けた人ならわかりますが、不慣れな方には把握するのが難しいでしょう。しかし、3Dモデルはそのままデータを見せるだけで完成図がつかめるため、クライアントとのすり合わせもスムーズです。

従来のやり方ではこの部分で時間を浪費する、完成系のイメージが合わないせいでトラブルが発生するなどといったことがありました。BIMでは初期段階の構図を見せてそのまま修正に入れるので、施工段階ではイメージの相違が起きにくくなっています。

BIMを活用した実例を紹介

大手企業では、BIMを活用して設計施工することが増えています。ここでは実際にBIMを活用した事例を紹介します。

株式会社竹中工務店

株式会社竹中工務店では、BIMを活用した設計が頻繁に使用されています。鉄のショールームと呼ばれる幾何学的なファサードが目を引く建築物、「三栄建設鉄鋼事業本部新事務所」もその一つです。傾斜のある壁に囲まれた部屋や直線のない廊下など、特徴的なデザインをしています。

この建築物では、「Rhinoceros」「Grasshopper」によって3Dモデリングを作成しています。その後、意匠設計に「ArchiCAD」、構造設計に「Tekla Structures」「Midas」、設備設計に「Rebro」と複数のソフトウェアを利用することで、複雑な構造物の設計を可能としたのです。

また、竹中工務店はBIMモデルを活用した基盤システム「建設ロボットプラットフォーム」を開発しました。これによりロボットの自律走行用に経路をシミュレーションすることや、遠隔操作による作業範囲を拡大させることなどが可能になります。同時に、クラウドで稼働するためシステム保守運用の効率化にも期待が持てます。

参考情報:竹中工務店「プロジェクトストーリー:三栄建設鉄構事業本部新事務所

株式会社長谷工コーポレーション

株式会社長谷工コーポレーションではマンション建設においてBIMを活用していて、品質・生産性の向上やクライアントにわかりやすい仕組みを導入しています。従来クライアントは、モデルルームとして展示してある数タイプを内覧して住戸の雰囲気を確認していました。

しかしこれでは、実際に住む住戸がどんなものか完全にイメージすることが困難でした。そこで株式会社長谷工コーポレーションでは、「長谷工オリジナルBIMビューワー」というソフトウェアを独自に開発しました。このソフトウェアはBIMとVR機器を連携することで、住戸の内装をリアルに内覧できるようにしたものです。

この取り組みにより、顧客が希望の住戸をバーチャルで内覧して確かめることができるようになりました。目で見て確認してもらうことで、住戸の販売促進にもつながっています。

参考情報:長谷工コーポレーション「長谷工版BIM

まとめ

平面図から作成するCADとは異なり、3Dモデルをベースに建築物を設計できるのがBIMです。意匠・構造・設備図は3Dモデルから自動で作成されるため、図面間での相違が起きにくく作業の効率化やストレスの軽減が期待できます。

現在ではさまざまな企業でBIMを活用しており、建設業界のスタンダードソリューションとなるでしょう。

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