ジェネレーティブAIとは? できることや懸念点、参考にしたい取組み事例について解説

 2023.08.31  デジタルビジネスシェルパ

日々進化を続けるAI技術の中で、近年注目されているのがGenerative AI(ジェネレーティブAI)です。学習データから新しくコンテンツなどを生成できるAIで、ビジネスや社会に変革をもたらすことが期待されています。この記事でGenerative AIの特徴などを把握し、適切にビジネスへ取り込んでいきましょう。

ジェネレーティブAIとは? できることや懸念点、参考にしたい取組み事例について解説

Digital Transformation Next ~シリコンバレー発DXレポート~(CTC DX Days 2021 chapter2 講演資料)

ジェネレーティブAI (生成AI)とは?

Generative AIは、生成AIとも呼ばれ、学習データをもとにして創造的なアウトプットができるAIです。テキスト生成AIのChatGPTに代表されるように、今後ますますの普及が予測されています。
具体的にどのようなことができるのか、従来のAIとの違いとあわせて、次の項目から解説します。

従来のAIとジェネレーティブAIの違い

Generative AIと従来型AIの違いは、新しいコンテンツを生み出せるか否かです。
従来のAIは、学習データをもとにした正誤判断や予測、決められた行為の自動化などを目的としています。このようなAIは識別系AIとも呼ばれ、画像認識や文字認識、需要予測などが得意です。生産現場での仕分け作業に画像認識AIを導入するなど、業務効率化のために様々な企業で活用されています。

一方のGenerative AIは、学習データをもとにして新しい文書や画像、プログラムコードなどを生成可能です。具体的に何ができるのかの詳細は後述しますが、技術的に言うと、深層学習の一種であるGAN(敵対的生成ネットワーク)やVAE(変分オートエンコーダー)などによってデータを分析し、抽出した法則やパターンから新しいアウトプットを生成します。
つまり、学んだものを組み合わせて新しいものを作るという、これまで人の手でしか実行できなかった作業が可能です。クリエイティブ領域の業務も、Generative AIの活用によって生産能力を大幅に向上させられる可能性があります。

ジェネレーティブAIでできることとは?

Generative AIの活用分野は多岐にわたり、アイディア次第で様々な恩恵を受けられます。Generative AIは具体的に何ができるのか、以下でメリットを1つずつ解説します。

画像や文章の作成

Generative AIの自動生成では、画像や文章、動画といったメディアの作成が可能です。具体的には、次のようなものを作成できます。

  • リアルな人物画像
  • キャラクター画像
  • 小説
  • キャッチコピー
  • アニメーションやスライド

これらの機能をプロのクリエイターが使えば、コストをカットし作業効率を大幅に向上できます。また、画像や動画について専門的な知識や技術がない人でも、クオリティの高い作品を作れる可能性があります。

業務のサポート

Generative AIは、プログラムのソースコードを生成したり、制作物のアイディア出しをしたりといった、クリエイティブな業務のサポートもできます。
これらの生成技術を開発やコンテンツ制作で活用すれば、効率化や品質向上、コスト削減が可能です。将来的には、コンテンツ制作やプログラムの受託開発などのプロダクトを、全てAIで完結できるようになる可能性もあります。 

定型業務の効率化

Generative AIの活用は、定型業務の効率化にも有用です。例えば、音声の文字起こしや文章の要約、データの可視化などをAIに任せることで、短時間で正確な成果物を作成可能です。コールセンターの通話内容を分析したり、音声生成AIで音声教材の作成をしたりといった使い方が考えられます。

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ジェネレーティブAI利用における懸念や危険性

ここまで紹介したように、Generative AIは多くのメリットがあります。しかし、いくつかの懸念や危険性もあるため、活用と対策を同時に進めていかなければいけません。
ここでは、具体的な懸念点として3つを紹介します。

著作権の侵害

Generative AIは、既存のデータをベースに新規のコンテンツなどを生成しますが、その際に著作権違反を起こす可能性があります。例えば、Generative AIが既存の画像や文章をコピーしたり、改変したりすることで、オリジナルの著作者の権利を侵害するかもしれません。

また、Generative AIが生成したコンテンツについて、著作権の範囲をどのように取り扱うか、法律や統一ルールの整備が不十分という問題もあります。今後は社会全体で、Generative AIに関する著作権のコンセンサスを形成していく必要があります。

フェイクの拡散

Generative AIの生成技術が向上することで、人間が作成したものなのか、それともAIが作成したものなのか、区別がつかなくなる恐れがあります。本物と見分けられないフェイクが生成され、詐欺やプロパガンダなどに悪用されるかもしれません。

例えば、Generative AIが有名人や政治家などの顔や声を模倣して、実際には存在しない発言や行動をさせることで、世論や選挙などに影響を与える可能性があります。フェイクの検出や防止に努めると同時に、騙されないための知識を一般の人々に普及させていくことも必要です。

プライバシーの侵害

Generative AIは、大量のデータをもとに生成能力を向上させますが、そのデータには、個人情報や機密情報が含まれている場合もあります。そのため、顔写真や音声データが無断で収集され、第三者に提供されるかもしれません。

また、これらのデータをもとにして生成されたコンテンツなどが、本人の同意や権利者の許諾なしに公開されたり、商用利用されたりする恐れもあります。これらのことから、Generative AIを利用する時は、個人情報をいかに保護するかの配慮が必要です。

ジェネレーティブAIに対する国や企業の取組み事例

Generative AIは多くの課題があるため、その利用に関しては、国や企業がルールの整備を進めている状況です。以下では、Generative AIに対する国や企業の取組み事例を紹介します。

文部科学省|暫定的なガイドラインを作成

文部科学省は、2023年7月4日付で、初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドラインを発表しました。このガイドラインは、小中高等学校までの教育現場でどのようにGenerative AIを利用するか、指針を示しています。

原則としては、活用が有効な場面での限定的な利用を促進しつつ、ファクトチェックの習慣づけや情報活用能力の育成も充実させるという考えが、このガイドラインの基本的な方針です。学校関係者がGenerative AIの活用について判断する際の参考資料として、活用例や留意点が提示されています。

なお、大学や高専については別のガイドラインが作られており、こちらは基本的な指針を提示しつつ、個々の教育機関で主体的に対応することを促しています。

参照元:文部科学省|初等中等教育段階における生成 AIの利用に関する暫定的なガイドライン

参照元:文部科学省|大学・高専における生成 AI の教学面の取扱いについて

CTC|AI倫理原則を策定

伊藤忠テクノソリューションズ(CTCグループ)は、2023年3月27日に、AI利活用における企業姿勢をまとめたAI倫理原則の策定を発表しました。CTCグループは、Generative AIなどの最新技術を積極的に取り入れると共に、その社会的影響や倫理的課題にも配慮することで、顧客や社会のニーズに応えることを表明しています。

策定された原則は、CTCグループにおけるAIの倫理原則を統一したもので、公平で透明性の高い、信頼できるAIシステムを提供することを目指しています。

参照元:CTC|AI倫理原則を策定 公平で透明性の高い、信頼できるAIシステムを提供

JDLA|生成AIの利用ガイドラインを公開

一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)は、2023年5月1日に生成AIの利用ガイドラインを公開しました。JDLAは、Generative AIの利用によって生まれる価値やイノベーションを促進すると共に、そのリスクや課題にも対応することで、社会的な信頼や受容を高めることを目指しています。

JDLAのガイドラインは、各組織がGenerative AIを導入する際のガイドラインのひな形となるよう作成されており、利用上の注意点やチェック項目などが記載されています。

参照元:JDLA|生成AIの利用ガイドライン

まとめ

Generative AIは、創造的なアウトプットによる革新的な変化が期待できますが、一方で従来のAIとは異なる課題もあります。著作権やプライバシーなどの懸念について、国や各企業が連携し、適切に対処していく取組みが必要です。
リスクコントロールに注意しつつ、Generative AIのメリットをビジネスに取り込んでいきましょう。

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